interview
聞きたい
【聞きたい萩原朔美×東出昌大3▶︎】
言葉の重みを考えてほしい
2022.11.16
口語自由詩を確立させた詩人、萩原朔太郎の没後80年にあたり、全国で不出世の詩人に焦点を当てた「萩原朔太郎大全」が開かれています。言葉の重みを考える機会にしてほしいと願う萩原朔美さん。東出昌大さんも絶賛しています。
52カ所で朔太郎大全
東出 「萩原朔太郎大全2022」が全国で展開されています。どんな目的があるのでしょう。
萩原 文学館というのは基本的に情報発信しない。文学の衰退とずっと言われていて、若い子が本を読まない。全国の文学館が同時かつ多発的にイベントをやれば話題になるんじゃないかと。朔太郎でなくてもいいんだけど、詩の方がいろいろと解釈に幅があるので、協力していただけると思い声を掛けました。
東出 没後80周年という記念の年ですね。
萩原 きっかけではあるけど、それは言い訳。本当は言葉の広がり、重さというのを考えてほしくて。いま言葉が非常に軽い時代です。言葉とは何か、人間が作った言葉であるのに言葉に人間が仕えるということをもう一度考えたほうがいいんじゃないか。
言葉が軽い時代に言葉がいかに重要であるか。私たちは言葉で考え、言葉で見て、言葉で聞く。そこのところをもう一度考えた方がいいんじゃないか。ということで、企画しました。編集長談(笑)。
東出 言葉を大事にしようと、館長が全国の施設に声を掛けた。どのくらい参加するのでしょうか。
萩原 公式には52カ所。北は北海道から南は九州まで。声が届かなかったところでも同じようなイベントを企画してくれていて、実際にはもっと多い。こんなに集まるなんて思ってもみなかったね。
前橋文学館は期間中、全国の施設に資料を貸し出すので、朔太郎研究会歴代会長展を開いています。
思索の時間を増やした方がいい
東出 いま同年代と話していてもまあ、みんな詩も読まないし、文学も読まない。活字からどんどん離れて、浅薄なネットニュースだったり、携帯に入ってくる情報を見るために活字を読む時間を割いている。もっと、みんな本を開きくべきだと思う。情報に溺れるのではなく、思索の時間を増やした方がいいと勝手に熱くなっています。
大全はそれだけやる意義があると思います。この機会にもっと朔太郎の業績を知ってほしい。ぜひ、若い世代にぜひ参加してほしいですね。
はぎわら・さくみ
1946年、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら演出や映像制作も始め、版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。2016年4月から前橋文学館館長の就任。多摩美術大学名誉教授。金沢美術工芸大客員教授。アーツ前橋アドバイザー。
ひがしで・まさひろ
1988年、埼玉県生まれ。高校時代にモデルとしてデビュー、パリ・コレクションにも出演する。2012年に映画『桐島、部活辞めるってよ』で俳優に転身。NHK連続テレビ小説の好演技で人気がブレイク、映画、舞台と幅広く活躍する。狩猟免許を持ち、みなかみ町などで狩猟をする。