watch
見たい
【聞きたい萩原朔美×東出昌大5▶︎】
映画『天上の花』に出演
2022.11.18
萩原葉子さんの小説『天上の花』が朔太郎大全記念映画として制作され、12月から全国公開されます。小説が世に出てから56年の時を経ての映画化。東出昌大さんは主役の三好達治役で出演、萩原朔美さんも共演します。
母親の小説にびっくり
東出 主演させていただきました映画『天井の花』は「朔太郎大全」を記念して制作されました。1966年に発表された萩原葉子さんの小説が原作ですが、館長はいつごろお読みになりました?
萩原 若いころはおふくろの本は読まなかったのね。そもそも本を読まない人だった。19、20歳のころ、新宿のジャズ喫茶でボーイの仕事をやっていたんだけど、そのときの先輩が北野武。バイトの連中って、役者やっていたり、音楽やっていたりして、みんな変な連中なの。で、小説の話題が多いのよ。
たまたま紀伊國屋書店に行ったら月刊「新潮」の表紙に『天上の花』が出ていて、著者に萩原葉子の名があって、それで読んだ。三好達治の話で、これが実に上手い。「男心が分かるの、この女って(笑)」。びっくりしましたね。母親がこういうの書くって。
戦争の悲劇と1人の女性への愛
東出 僕は映画出演が決まってから手に取りました。印象? 非常に読みやすかったですね。
暴力がどんどんエスカレートしていくんですけど、すごい映像が浮かんできました。本を読みながら。男女2人の動きだったり、寒村の寒々しい海の情景が目の前に広がっているようで。
萩原 台本はちょっと原作と違っているけど、それはしょうがない。改めて脚本家が作るので違う方向に行っている。東出さんが演ずる三好達治だって、原作と映画で少しずつ違っているでしょ。
東出 違いますね。先日、三好達治さんの甥御さんにお会いしたら、「『天上の花』の三好達治と本物は全然違う」って言っていました。それに調べたら三好達治が「葉子ちゃんが書くのなら好きに書いていいよ」って言ったそうですね。
戦争詩が一つのテーマになっていて、戦争詩を書くことで食い扶持を得たけど、それは詩人として悪魔に魂を売るではないけれども、プロパガンダのために自分が書きたくないことを書いてしまった、という後悔と戦争の悲劇を描いています。
戦争の結末と1人の女性を愛する、すべてのことが身に降りかかった時に人間はあそこまでなれるのかって驚きの気持ちを抱きながら芝居しました。分からなくはないなって。
はぎわら・さくみ
1946年、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら演出や映像制作も始め、版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。2016年4月から前橋文学館館長の就任。多摩美術大学名誉教授。金沢美術工芸大客員教授。アーツ前橋アドバイザー。
ひがしで・まさひろ
1988年、埼玉県生まれ。高校時代にモデルとしてデビュー、パリ・コレクションにも出演する。2012年に映画『桐島、部活辞めるってよ』で俳優に転身。NHK連続テレビ小説の好演技で人気がブレイク、映画、舞台と幅広く活躍する。狩猟免許を持ち、みなかみ町などで狩猟をする。