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緩和ケア、舞台は前橋 
ドキュメンタリー映画「ハッピー⭐︎エンド」上映開始

2025.04.19

緩和ケア、舞台は前橋 
ドキュメンタリー映画「ハッピー⭐︎エンド」上映開始

 主人公は前橋市総社町で緩和ケアの診療所を開く医師の萬田緑平さん。映画「ハッピー⭐︎エンド」が4月19日から5月9日まで、前橋シネマハウスで上映される。癌の終末期と聞いて、ベッドで痛みに苦しむだけというイメージを抱くなら、その先入観はこの映画を見ると払拭されるだろう。前橋市内の5人の患者が、自分の家に居ながら亡くなるまでの、やりたいことをして日々を謳歌する姿、家族との交流とその中での葛藤、泣き笑い、ありのままを見せてくれる。
(取材/柁原妙子リポーター)

余命は自分で決める

 萬田さんは、 1991年に群馬大医学部を卒業。17年前に消化器外科の第一線から在宅緩和ケア医に転身し、現在は総社町の大渡橋西詰で診療所を開いている。

 医師による余命宣告については「余命は自分で決めましょう」と一蹴。明るく茶目っけがあり、さっぱりしたキャラクター。映画の冒頭から思わずクスクス笑ってしまう場面が用意されている。

 「癌は本人と周囲の人がお別れをする時間をもらえる病気」とポジティブに捉え、患者と家族が素直な気持ちの交流ができるよう、時にさり気なく、時に強引に背中を押す。

©「ハッピー⭐︎エンド」

 彼らが家で過ごせるよう支えるのは、医師、看護師、理学療法士など様々な医療従事者によるチーム医療。

 痛みからの解放には、医師により医療用麻薬の中からその人に適切な薬と適切な量が処方される。時にかなり大量になることもあるが、専門家の見極めで上手にコントロールし、ゴルフをしたり旅行をしたりなど、普段の生活が送れる。

 「自分は終末期の医療をどのように希望しているか」をあらかじめ意思表示しておく、リビング・ウィルについても触れる。

©「ハッピー⭐︎エンド」

 2018年に亡くなった女優、樹木希林さんは、癌という病を得て変化した心の在りようを生前行われた講演会の中で語る。「生きるのも死ぬのも日常、死が日常なら怖くない」と。

 映画を見ながら、在宅、入院に限らず終末期の医療で受けられることや、死を受容することで変化する心理を知る構成になっていて、良質な緩和ケア入門映画とも言える。

 死という永遠の別れは重たいテーマと感じるかもしれないが、望む通り生き切った人とそれを見送った家族の様子は幸せそうでもあり、見終わった時の気持ちは軽い。

心からやりたいことをして、生きる

 「まだ在宅緩和ケアを知らない人に、この映画を是非見てほしい」と萬田さん。「緩和医療に携わるようになった頃に比べれば社会の周知の広がりを感じるが、まだまだ」。在宅緩和ケア対象疾患は、癌に限らず診療可能とのこと。

 診療のポリシーは「患者本人が好きなように、本人が望むことを全力でサポートする」。自身も、自分本位に生きることを体現して見せている。この夏、30年来の夢を叶えるため8月中ばから診療所を4カ月ほど休診し、オーロラを見に行く船旅を実行する。この旅行は単に楽しみとしてだけではなく、今後の緩和ケアの構想を練る一環でもあるという。

 監督は「いただきます」「夢みる小学校」など教育や農業をテーマにドキュメンタリー作品を制作するオオタヴィンさん。佐藤浩市さんと室井滋さんがナレーションを担当している。

▲萬田さん

映画「ハッピー⭐︎エンド」
上映館 前橋シネマハウス(前橋市千代田町5-1-16 アーツ前橋上 3F)
期間 4/19(土)~5/9(金)
上映時間 
4/19〜4/25 ① 14:25-15:55 ② 19:00-20:30
※4/20①の回終了後、萬田緑平さん、オオタヴィン監督によるトークショー
4/26〜5/2 ① 10:00-11:30 ② 17:00-18:30
※4/26①の回終了後、萬田緑平さんによるトークショー
5/3〜5/9 未定