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学びたい
シルクの現在、過去、未来
前橋で「ファッション講座」
2024.01.14
「ティーンと大人のためのファッション講座」が1月14日、アーツ前橋内の「ロブソンコーヒー」で開かれた。「前橋とシルク/シルクの新しい可能性」をテーマに4人の専門家が講演、上毛かるたに「県都前橋 生糸(いと)の市(まち)」と詠われた前橋市の歴史を伝え、養蚕を川上とする絹文化の未来を展望した。
評価高い国産シルクの振興を
前橋市中心街にある老舗の呉服店「小川屋」の伊藤大介社長は着物姿で登場した。「私の着物で群馬県産のシルクを使っているのは組紐だけ」と明かし、国産シルクによるシルク製品は1%にすぎないと指摘した。
県産シルクの生産拡大に向け、自ら家族とともに「桑の苗木植樹プロジェクト」に取り組んでいることに触れ、「農産物のように蚕の生産者名をシルク製品に表記したらいい」と提案。「日本のシルクの評価は高い。円安で価格差が縮小しているいま、頑張ってもらいたい」と養蚕農家にエールを送った。
前橋絹文化研究会の庭野剛治副会長は「生糸の歴史と下村善太郎」と題して、幕末の横浜港開港を起爆剤に発展した前橋の養蚕、製糸業の推移を振り返るとともに、多額の私財を投じて県庁移転や臨江閣建設に尽力した初代市長、下村氏の功績を讃えた。
光るシルク、昆虫食、化粧品
群馬県蚕糸技術センターの池田真琴さんは「光るシルク」を生み出す遺伝子組み換え蚕や昆虫食の開発、化粧品や治療薬への応用について、実態を紹介した。光シルクの蚕を生産しているのは前橋市内の一部の農家だけで、普及への課題も言及した。
桐生市でまちづくり会社「UNIT KIRYU」を運営している川村徳佐さんは地元の人や都内からの移住者と力を合わせて進めているプロジェクトを説明。旧黒保根村の広大な耕作放棄地を活用して桑を植え、養蚕を手掛け、シルクの機能を生かした化粧品やサプリメントの開発を進めていることを明らかにした。
絹産業にかかわっている人も出席、全国の6割の生糸生産を担う碓氷製糸の土屋真志常務は「講師の話を聞いて自信になった。厳しい状況だが、絹文化の一翼を担うべく頑張っていきたい」と決意を新たにした。
ファッション講座は前橋市でクリエイティブな学びの場を生み出したいと、埼玉県との二拠点生活をしている「ファッションスタディーズ」の篠﨑友亮さんと「ジェネリーノ」の松前博恵さんが企画。2023年7月に前橋市出身のデザイナー、NIGOさんに焦点を当てた初講座を開いた。