風雷
絶品の黒酢酢豚を食べてみた

創業から半世紀を超え、外壁の蔦はいよいよ風格を帯びてきました。セットメニューが人気の店ですが、以前から気になっていた本格中華を頼んでみます。

「黒酢酢豚定食お願いします」。「黒酢」とわざわざ別表記。メニュー表でひと際異彩を放っています。

注文を受けて、親父さんの三森清海さんは何やら誇らしそうな表情を浮かべます。豚肉を一度油通ししてから野菜と合わせて炒めます。ガタ、ゴトッと中華鍋を振る心地よい音が厨房から聞こえてきました。

美しすぎる一皿です。豚肉も野菜も大きく切られ、黒酢の餡を纏っています。

豚肉は片栗粉で衣が付けられ、噛むとサクッ。中に閉じ込められた肉の旨みとすっきりした甘さの餡が合わさり、最高の味に仕上がっています。

タケノコ、ピーマン、ニンジン、タマネギ、シイタケにブロッコリー。野菜もすべて主役でした。素材の味が生よりもはっきりします。

期待以上の味に感激しました。親父さんはかつてあった「赤かんばん」のコックさん。店でも当初は本格中華を提供していましたが、ラーメンとご飯物のセットに手が掛かり、メニューを絞りました。「黒酢酢豚はどうしても食べたいというお客さんが多くてね」。中華の料理人の矜持が感じられました。

次々と来る常連さんはみなセットを注文します。市会議員のOさんは焼きそば。「いつもこれ。大きなおにぎりと玉子スープが付いて、もう最高ですよ」と感激しきり。ガテン系の３人連れはラーメンにカツ丼やチャーハンを組み合わせます

暖簾を上げている間、注文はひっきりなし。親父さんと奥さんの洋子さんが忙しそうに、うれしそうにさばいています。