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前橋で映画人を育てたい 
飯塚花笑さんが立川町通りにスタジオ創設

2023.11.03

前橋で映画人を育てたい 
飯塚花笑さんが立川町通りにスタジオ創設

前橋市在住の映画監督、飯塚花笑さんが11月5日、立川町通りに「スタジオ6.11」を創設する。役者を目指す人への演技教室のほか、エキストラ教室、撮影、編集など映画の技術を伝授する講座を開く。プレオープン中のスタジオを訪ね、飯塚さんにインタビューした。(取材/阿部奈穂子)

『世界は僕らに気づかない』をきっかけに

スピーカーから爆音が流れるなか、体を動かす生徒たち。けんかのシーンなのか、ときどき、叫び声も聞こえる。外には「演技レッスン中」と書かれた看板。

立川町通りに生まれた66平方㍍の小さなスタジオ。最新作『世界は僕らに気づかない』で大阪アジアン映画祭「来るべき才能賞」を受賞した飯塚さんが「前橋で映画人を育てたい」と創設した。

『世界は僕らに気づかない』は全編を群馬で撮影した。キャストは演技経験のない本県在住や本県出身者。「撮影が終わった後も『演技のレッスンを続けてほしい』という声を受けて、各地のレンタルスタジオで教室を行ってきた。しかし予約が取れなかったり、利用料金が高かったり、時間的制約も多かった。それならば自分のスタジオを構えようと考えました」と経緯を話す。

▲群馬県在住者や出身者が中心になって制作した映画『世界は僕らに気づかない』の1シーン

スタジオの場所をどこにしようか、高崎か前橋かで相当悩んだ。「生徒の半分は都内在住。交通の便を考えると高崎がいい。前橋に決めた理由は『これから街が変わっていくぞ』という前向きな力を感じたから。僕たちとどこか似ていると思った」

▲かつてはロードバイク店だった店舗を改修

内面の演技を磨く

メーンとなる「コアメンバークラス」は群馬県から映画俳優を目指す教室。月1度のレッスンでは、自分自身の感情を動かすことに力を入れる。「映画館の大きいスクリーンでは、表面だけの芝居はすぐに見抜かれてしまう。想像力を駆使して、内面を表現できるよう指導しています」

実際にカメラを入れて、動画を撮り、それをみんなで検証する、全国的にも珍しい「オンカメラクラス」も開く。

▲「映画監督でなかったら教師になりたかった」と飯塚さん。教えることに情熱を燃やす

ほかに、日頃エキストラとして活動する人や演技に興味のある人に向けて、エキストラのプロを目指す「ひとびとの教室」は月1度。カメラマンや編集者など映画に関わるプロを講師として招く「1日映画学校」は2カ月に1度開催。こちらは誰でも気軽に参加できる。

▲スタジオに立つ飯塚さん。定員は15人ほど

レッスン生は現在約60人。「東京から前橋に通い、中心商店街を楽しんで帰る生徒もたくさんいる。映画の力で前橋に新しい循環を生むお手伝いになればうれしい」と話す。

映画監督としての飯塚さんは来年5月から、新作の撮影に入る予定。作品は60年~70年代の東京を舞台に、実在したトランスジェンダーの物語を描く。

▲スタジオの一角には、飯塚さんが幼いころから集めていた鍵のコレクション

店舗情報

スタジオ6.11

住所 前橋市千代田町2-9-5 マルハチビル1階
メールアドレス 6.11studiotsuru@gmail.com
ホームページ https://www.instagram.com/studio6.11_/
料金 コアメンバークラス 6000円
オンカメラクラス 7500円
ひとびとの教室 3900円(次回は12月1、2日に開催)

いいづか・かしょう

1990年、前橋市生まれ。木瀬中―高崎経済大付属高―東北芸術工科大デザイン工学部映像学科卒。大学在学中は映画監督の根岸吉太郎、脚本家の加藤聖人に学ぶ。トランスジェンダーである自らの体験をもとに制作した処女作『僕らの未来』はぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2011にて審査員特別賞受賞。『フタリノセカイ』『世界は僕らに気づかない』と高い評価の作品を次々と送り出す。