interview
聞きたい
【聞きたい 葉一さん▶2】
うれしい「サクラサク」の便り
2023.08.09
You Tubeで小、中、高校生を相手に授業動画を無料配信している教育You Tuber葉一(はいち)さん。顔が見えない教え子から届く合格の知らせが一番うれしいと言います。夢は東京ドームで一緒に自習することとか。多くの子供たちと勉強し、卒業式を開く。夢がかなうといいですね。
営業、塾講師、無駄な時間はない
―葉一さんは高校時代、素晴らしい恩師に出会ったそうですね。
いまも尊敬し、目標としています。強烈な出会いでした。『俺はお前らに好かれる気なんかねーから』って言い放ったんですよ。
とんでもない先生だなと思ったのですが、担当する数学の授業はすごく分かりやすくて、板書はきれい。これも真似ています。
叱るときは叱り、褒めるときは本気で褒めてくれる。こんな先生になりたいなと憧れました。
―東京学芸大に進学したのは先生の影響ですか。
はい、当初は教育以外の進路を考えていたので専門学校への進学を考えていました。ですが、先生のアドバイスもあり、学芸大を目指すことになりました。
独学で勉強法を考え、一生懸命勉強しました。偏差値を20上げて何とか合格することができました。
―教員免許を取得したのに、卒業後は学習教材のセールスマンになりました。
いきなり先生になるより、一般企業での経験をしたかったので、営業の仕事に就きました。持病が悪化し、1年近くで退職しましたが、飛び込み営業をして培ったトークスキルはYou Tubeに役立っていますので、いい経験をしたなと思っています。
―塾の先生を経て、現在に至るわけですね。
3年間、個別指導塾の講師として働きました。子どもたちとの濃密な時間は私の人生においてかけがえのない時間となりました。あの頃の経験がなければ、いまの活動もスタートしていないと思います。
夢は東京ドームで卒業式
―You Tubeとリアルの二刀流はどうですか。
中途半端になりますからね。それはやめておきましょう。いまの活動に意義を感じていますから、全力でやります。
でも、対面のように親近感が沸く試みもしています。
―どんな試みですか。
You Tubeの授業に加え、毎週土曜、日曜の朝に『自習室』を開いています。視聴している子供から依頼があって始めました。300人くらい参加しています。
1時間、みんなで一緒に自習します。私もパソコンに向かって黙々と仕事をします。図書館で勉強するのと一緒。1人だとサボってしまうけど、みんなでやれば連帯感も生まれますから。
―それは楽しそうですね。目には見えないけど、確かにみんなが一緒に勉強しています。
夢は東京ドームでリアルな自習室を開くことです。芝生のグラウンドに机といすを並べて、それぞれが好き勝手に勉強する。それに加えて卒業式もやりたいなって思っています。
―一方通行のYouTube。顔が見えない教え子や保護者から合格報告やお礼メールが届くそうですね。
子供たちから『サクラサク』の報告が届くと、本当にうれしいんですよ。『よく頑張ったね』と褒めてあげたい。
親御さんからも喜びの声が届きます。塾に通わせられなかった負い目があったとおっしゃる方もいますね。
この仕事をやってよかったと、しみじみ思います。人生やり直せても、同じ仕事をするでしょう。
はいち
1985年3月生まれ。館林高-東京学芸大教育学部卒。教材販売会社で営業職に就いた後、埼玉県内の個別指導の塾講師に。2012年6月から授業動画の配信を開始。「とある男が授業をしてみた」は登録者190万人、総再生回数6・5億回に達する。