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空きビルが劇場になる
「寺町藝術センター」9月誕生

2026.07.09

空きビルが劇場になる
「寺町藝術センター」9月誕生

 寺町と親しまれ、かつて芸人や役者が行き交い芝居や芸能でにぎわった前橋市三河町。その歴史を現代に蘇らせる新たな文化拠点「寺町藝術センター」が9月19日に誕生する。空きビルと空き家が小劇場やアートホテルへと生まれ変わる。前橋国際芸術祭の開幕に合わせて始動、改修費や運営費を募るクラウドファンディングも近く始める。

築68年のビルが小劇場に

 寺町藝術センターの中心となるのは、八展通り沿いの西側に建つ築68年の鉄筋コンクリート造地下1階地上4階建てのビル。かつては編み物専門学校として数百人が学び、近年まで編み物サロンとして親しまれてきた。

 5年間眠っていた建物には、戦後復興期ならではの堅牢な造りと曲線を描く階段など職人の矜持が今も息づく。その個性を壊すことなく活用し、1階に最大58席の小劇場「百劇」を整備する。

▲1階スペースが劇場になる

 運営するのは「劇団ザ・マルク・シアター」と「百花繚乱」を主宰する生方保光さん。2つの劇団の本拠地となるだけでなく、県内外の劇団へ貸し出し、稽古場としても活用する。ピアノを備え、音楽ライブや映画上映、詩の朗読、合唱など多彩な舞台に開放する。

 地下はバックヤード。将来的には2階をギャラリー、3階をスタジオ、4階を出演者が滞在するレジデンスとする構想だ。

▲館内のあちこちに編物サロンの名残が

 オープン初日には、前橋文学館特別館長の萩原朔美さんが演出するこけら落とし公演「街はいま、劇場になりたがっている」を上演する。

 前橋国際芸術祭では会場の一つとなり、アーティストや前橋工科大学の学生が建物の構造そのものを生かした作品を展示する。

▲デザイン性の高い昭和の建物

空き家は「泊まれるアート」

 劇場の西側にある築50年、3階建ての空き家も新しい役割を担う。

 東京・日本橋や高円寺でアートホテルを展開するBnA(田澤悠代表)が「BnA Noie」として再生する。4組のアーティストが客室をデザインし、宿泊料金の一部はアーティスト支援に充てられる。

 2階スペースは4人まで泊まれる客室となり、料金は1室3万5000円程度を予定している。

▲劇場の西側にある建物も変貌する

 面白い試みとして、1階には誰でも1日店長や1日ママになれるスナックを開店する。観光客と地域住民が肩を並べて語り合う、新しい交流の場を目指す。

 外壁には高さ10㍍、幅8㍍の巨大壁画が描かれる。

▲工事が進む1階スペース

「前橋の文化活動の拠点に」

 プロジェクトを進めるのは絵本ギャラリー「フリッツ・アートセンター」を運営する小見純一さん。空きビルも空き家も小見さんが遺産として亡き母から引き継いだ。

 「寺町は室町時代から芸人や役者が滞在し、芸場や稽古場が数多くありました。建物が完成して終わりではありません。生態系のように成長し、10年後、20年後に前橋の文化活動の拠点になっていてくれたらうれしい」。この町で生まれ育ち、町を愛する小見さんは建物に優しいまなざしを向ける。

▲建物を案内する小見さん

 寺町藝術センターの応援団長の萩原さんも「この建物の古さや汚れが最高におしゃれ。もっと劇場が増えてほしい。空き家も廃校も劇場にすればいい。前橋は下北沢のような演劇の街になれる」と期待する。

▲写真左から生方さん、小見さん、萩原さん、田澤さん夫妻