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【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.25】
宮川道路
2023.06.28
夜、前橋駅の高架下を歩いていたらこの光景に出会った。思わず声を上げてしまった。凄い。コンクリートの柱に樹の影がクッキリと、まとわりつくように絡んでいる。昔その場所に生えていた樹が、漆黒の影となって出現したかのようなのだ。
映画をいくつも思い出した。
樹の影は、よく家の外壁に映される。不吉な運命が待ち受けているような雰囲気だ。
室内の白壁には、風が吹き荒れている表現での登場だ。
路面に街路樹の影がクッキリ映し出されている場合は、照明を当てるより墨汁で描いてしまった方が簡単だ。宮川一夫の素晴らしい仕事がいくつも浮かんでくる。
あの日以来、私はこのコンクリート支柱の道を、宮川道路と命名した。
名付ける事で、夜の道が楽しくなったのは言うまでもない。
Sakumi Hagiwara
萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。昨年、世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵された。著書多数。現在、多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長。2022年4月から、金沢美術工芸大客員教授、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。
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