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「見えない人、見えにくい人、見える人、すべての人の - 感じる彫刻展 -」
12月3日までヤマトギャラリーで

2022.10.09

「見えない人、見えにくい人、見える人、すべての人の - 感じる彫刻展 -」
12月3日までヤマトギャラリーで

盲目の彫刻家、三輪途道(みちよ)さんの彫刻展が、JR新前橋駅近くのヤマト本社1階ギャラリーホールで開かれている。「見えない人、見えにくい人、見える人、すべての人の - 感じる彫刻展 - 」と銘打たれ、前期は三輪さんの個展、後期は三輪さんと繋がりのある作家とのグループ展。作品を触ったり、持ち上げたり、抱きしめたり。後期では「嗅いだり」もできる。視覚障害者向けのこういった大々的な展覧会は県内では希少。三輪さんに作品制作についての話を聞いた。(取材/柁原妙子リポーター)

▲作品を触ってみよう

原点の仏像を「作りたい」

三輪さんは目が不自由になってからノミを置き、脱乾漆という技法を使って作品を制作している。

元々仏像が好きでこの道に進んだ。東京藝術大の卒業制作では東大寺に2年ほどかけて通い「俊乗房重源(しゅんじょうぼうちょうげん)」の模刻を制作、寄贈。その縁で東大寺から依頼され、「菩提僊那(ぼだいせんな)」の仏像を納めたほどの腕前を持つ。

仏像は依頼されたものばかりで自らの意思で彫ったことはなかったが、見えなくなって初めて「祈る形を作りたい」という気持ちが湧き、今年制作したものが展示されている。

「上手く作れない、なんちゃって仏像です」と三輪さんは言うが、それは彼女の魂が作らせたもの。作品のタイトルは、三輪さんの「なんとなく自分のそばに見守っている存在がいるという感覚がある」という思いから『存在する者』にした。

目も鼻も口もほとんど作れていないのは、「いまの精一杯の技術力」。特に、目が見えなくなったことで具象彫刻の命である目が作れなくなってしまった葛藤は、「目を作らないで具象ができるか」という自分自身への勝負だと前向きだ。

▲「存在する者」と名付けられた作品

▲心に染み入る作品群

見なくてもイメージの色を作れる、これぞ技

目が見えなくなり、彩色の作業にも苦労がある。「色付けよりも、作品が求めてくる色を見つけるところが最も厳しい」そうだ。色を決め、調合し、塗る、全て自分で行っている。黒は漆の色、赤はベンガラを混ぜて、見なくても昔やった作業の記憶で「これをこれくらい混ぜればこういう色になるとわかる」という。

「ただ、犬だけは主人が塗りました」。黒地に白のブチにしたかったそうだが家族からダメ出しされ、同じく彫刻家である夫が塗った。その色を三輪さんは知らない。作品に不思議な違和感を覚えるのは、そんなところから来ているのだろう。

▲不思議な魅力を持つ犬

「見えない人、見えにくい人、見える人、すべての人の – 感じる彫刻展 - 触る・聞く・嗅ぐ・話す・見る」
会場:ヤマト本社1Fギャラリーホール
日曜日は休館
開館時間:9時30分〜17時、観覧無料
【前期】三輪途道 個展 10月3日(月)〜29日(土)
・10月15日(土)13時30分〜15時 「絵本 みえなくなったちょうこくか 制作裏話」立木寛子さん(著者)と三輪さんによる対談
・10月22日(土)13時30分〜15時 「みえない人が表現すること」多胡宏さん(元県立盲学校校長・版画家)と三輪さんによる対談
・10月29日 (土)13時30分〜15時 「見るって何?」伊藤亜紗さん(美学者)と三輪さんによる対談
※いずれも先着30名まで、申し込み不要だが当日13時10分までに受付が必要
【後期】グループ展 11月7日(月)〜12月3日(土)
・11月5日(土)10時〜12時 ワークショップ「見えない人、見えにくい人、見える人が一緒に鑑賞するには、どんな方法があるか考える」
・11月12日(土)13時30分〜15時 いろいろ鑑賞会「見えない人、見えにくい人、見える人、誰でも参加できる」鑑賞会
※いずれも事前申し込みが必要、FAX(0274-84-2117)HP(https://menoki.org/)にて