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学びたい
【教えて金井社長】前橋×デジタル田園都市vol.3
まえばし暮らしテックでこう変わる
2022.08.27
デジタル田園都市構想やまえばしIDについては理解できました。では前橋市が提出し、採択された事業プラン「まえばし暮らしテック推進事業」とはどんな内容なのでしょうか。前橋市に本社を構えるIT企業「クライム」社長の金井修さんに、わかりやすく解説してもらいました。
(取材/阿部奈穂子)
習熟度に合わせた学びを提供
――デジタル田園都市国家構想推進交付金の対象に選ばれた「まえばし暮らしテック推進事業」。ざっくり言うとどんなものでしょう。
「前橋市民が、赤ちゃんからお年寄りまで、それぞれのライフステージにおいて、自己実現ができて幸せな生活を送れることを目標にした事業です。その取っ掛かりになるような9つの具体的なプランを掲げています」
――主なものをご紹介ください。まずは『コミュニティ共助学育』について。
「市民みんなで『学ぶ、働く』を応援しようという事業です。“めぶき場”というオンライン上の空間を作り、『教えたい人―学びたい人』『働きたい人―職場体験を受け入れたい人』をマッチングさせていきます」
――面白そうですね。
「『学校の授業でわからなかったことを、誰かにわかりやすく教えてほしい』といった学生、『趣味の〇〇をもっとうまくなりたい』といった大人たちの要望にもこたえられます。逆に、『自分の得意分野を教えたい』という指導意欲のある方たちの生きがいづくりにもつながります。
まえばしIDに登録された、個人の学習履歴や習熟度をもとにすることで、『この子はここがわかっていないから、その部分を重点的に教えよう』といったパーソナルな学びを提供できるのも良い点です」
――前橋の子どもたちの学力が上がりそうな気がします。「アレルギー情報の多角連携による寄り添うサービスの創出」。これは、なんとなくイメージが湧きます。
「日本人の約半数がアレルギーを持っているといわれる時代。でもいまの緊急・救急体制では、現場に到着した際に本人の意識がないとアレルギーや持病などはわからず、適した対応はできません。学校などでも十分に注意はしているものの、アレルギーによる事故は少なくありません。
そこで、アレルギーや持病の情報をまえばしIDに入力してもらい、それを学校や消防などの隊員が入手できるようにして、万が一の救急対応や普段の給食に役立てようというサービスです。
将来的には飲食的やスーパー、介護施設などとの連携も行っていく計画です」
車社会を一変させる
――「シミュレーション運転時の生体データを活用した危険運転度合の測定」。これは車社会の前橋に役立ちそうですね。
「自家用車による交通事故は、被害者も加害者も高齢の方が多いって知っていますか。でも地方は公共交通が発達していないから、免許返納に踏み出せない。
そこで科学的に、運転適性評価を診断して、客観的な気づきを得てもらおうという事業です。具体的には、ドライブシミュレーターを使って、高齢の方にバーチャルな前橋の街をドライブしてもらい、運転を点数化します。同時に、空間認知や状況判断、反応速度なども評価します。規定数値を下回った方は、再テストで脳波などのバイタルデータを取得。これらの結果から、運転適性を評価します」
――運転適性の低い人は免許返納を視野に入れた方がいいとなりますね。でもその後の交通手段が心配です。
「実は、今回のデジタル田園都市国家構想推進交付金で、群馬県もタイプ2で採択されているんです。事業名は『ぐんま共創モビリティ社会の推進』。これは県と前橋市が一緒に取り組む予定です。
内容は、誰でも低額で快適に使える交通サービスの早期実現、自動運転の実用化を目指した取り組み、東日本初となるバス会社共同経営によるパターンダイヤ化など、公共交通を充実させる事業です」
――多彩な内容です。これらの事業はどうやって運営していくのですか?
「前橋市が大株主となり、近々、めぶくグラウンドという株式会社を立ち上げます。そこを母体に、各所と連携しながら行っていきます。この事業が起爆剤となり、前橋がITの聖地になることを望んでいます。いや、絶対なりますけどね(笑)」
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