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島田フルイ店が店仕舞い
117年の歴史に終止符
2025.09.09
前橋市中心街で篩(ふるい)や蒸篭(せいろ)といった木製の曲物(まげもの)を手作業で製造、販売していた島田フルイ店が8月末で閉店した。4代目店主の島田泰男さんが8月30日、85歳で永眠。1908(明治41)年創業、117年の歴史に終止符を打った。
ヒノキの蒸篭、メンパ
前橋市中心街を東西に通る立川町通り。ビルとビルの谷間に古びた平屋建ての店がある。
中を覗くと、ヒノキの香りが漂い、真新しい篩や蒸篭が所狭しと並んでいた。
島田さんは店の奥の小さな作業場で年季の入った小刀を手に黙々と作業した。薄く切ったヒノキを丸く曲げ、山桜の樹皮で縫い留めていく。金属は一切使わない、天然素材100%の逸品だ。
▲取材を受ける島田さん=しゅんこう日記から
創業時は竹細工の専門店だった。島田さんの父の代から曲物を扱うようになった。金属製の調理道具が一般的になったが、木の温かみのある島田さんの曲物を求める人は少なくなかった。「メンパ」という蓋付きの弁当箱は若い女性にも人気だった。
「丁寧に使えば50年後も使える。父が作った品を修理に持ち込む人もいた」。1年近く前、立ち寄って話を聞いた際、誇らしそうにそう話していた。
▲片原通りにあった片原饅頭で使用されていた「もろみ漉(こ)し」を復元した物
半世紀使える品を大事に
島田フルイ店のほかに手作業で曲物を作る店は前橋市内にはなく、全国的にも希少。閉店の知らせに愛用者は一様に悲しんでいる。
ずっと贔屓にして1年前にも蒸篭を買ったという60代の女性は「鍋の大きさに合わせて作ってくれました。もう買えないんですね。少しでも長く使えるよう、大事にします」と寂しそうに話していた。
▲ビルとビルに挟まれた島田フルイ店
▲入口に張られた閉店を告げる貼り紙


