interview
聞きたい
【聞きたい 日沼大樹さん2▶︎】
映画はもう一つの家族
幅広い年齢層に良質な作品を
2022.06.23
前橋市街地唯一の映画館として、ミニシアター系の作品のほか、シネコンで上映終了となったビッグタイトルや子ども向け映画を流す「前橋シネマハウス」。支配人の日沼さんに、映画業界に入った理由、前橋シネマハウスの誕生から今後までを聞いた。取材/阿部奈穂子
おしゃべりも出入りも自由
子ども向け上映会を
―前橋シネマハウス、開館当初はどんな雰囲気でしたか。
「全然お客様が入りませんでした。というより、存在すら知られていませんでした。
上映する映画もどんなものにしようかととても迷いましたね。当初はミニシアター系の作品が中心でした。それだと濃くて難しいイメージがあり、お客様が片寄ります。
そこで、シネコンで上映終了になったビッグタイトルも厳選して流すことにしました」
―例えばどんな作品ですか?
「ボヘミアン・ラプソディやグレイテスト・ショーマン、樹木希林さん主演の日日是好日などは多くのお客様に来場いただきましたね。
前橋シネマハウスのテーマは、『映画はもう一つの家族』でいこうと…。ミニシアターの枠にとらわれず、様々な年齢の方に向けて、幅広い映画を上映していこうと決めました。ここに行けば良質な映画に出逢える、と信頼いただける場所にしたいなあと思っています」
―前橋シネマハウスでこれまで最多動員数を記録した作品は?
「私も製作に関わった2019年公開の『あの日のオルガン』です。太平洋戦争末期、保育園の疎開に挑んだ保母たちの実話をテーマにしています。シネコンでは嫌われる地味な作品でしたが、この小さなシアターでは支持されましたね」
―これから力を入れていきたいことは?
「子ども向け上映会です。商業映画や人気アニメではなく、親が本当に子どもに見せたい映画を月替わりでラインナップしたいと考えています。
昨年の夏休み、『ウルフウォーカー』というアイルランドのアニメを上映したところ、子どもたちにものすごく好評で。市内の保育園から、散歩の時間に連れて行きたいという、オファーもありました。まん延防止が出て、ダメになってしまったのですが…。
こういう良質な子ども向けの映画をどんどん上映していきたいですね」
―中にはおとなしく映画を見ていられない子もいますね。
「子ども向け上映会では、シアターでのおしゃべりも、出入りも自由にしたいです。そうすれば保護者の方も気兼ねしなくていい。
子どもたちに映画館の大きなスクリーンで作品を見る楽しさを知ってほしいと思います」
ひぬま・ひろき
1986年6月、前橋市生まれ。東京農大二高―関東学院大卒。太田アカデミーで広報を担当した後、2016年、父親が社長を務める群馬共同映画社へ入社。2018年、前橋シネマハウスの支配人に。