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聞きたい

【聞きたい 角田克さん▶2】
All is well‼(きっとうまくいく)

2024.11.06

【聞きたい 角田克さん▶2】
All is well‼(きっとうまくいく)

 法曹界を目指し、山登りに夢中になり、縁あって朝日新聞社に入社した角田克社長。主に社会畑を歩み、35年となった。新聞業界が厳しくなってから門を叩いてくる若い記者をリスペクトし、エールを送る。「All is well‼(きっとうまくいく)」と。

高校時代、朝日新聞に投稿

―新聞はよく読みましたか。

 家では朝日新聞と上毛新聞、それと日本農業新聞を取っていました。世の中を見る基礎的な知識が自然と育まれたのかなと思います。

 高校時代は軟式野球部に所属しながら、新聞委員会にも入っていました。新聞が好きだったのでしょう。

 高校2年生の時、朝日新聞の「若者からの手紙」という欄に投稿したことがありました。ロッキード事件で有罪となった田中角栄元首相について書きました。

―どんな内容ですか。

 事件のことは別にして、政治家としての田中角栄を否定すべきではない、地方を豊かにして日本全体を改造しようとした功績もあったのではないかといったことです。

 そうしたら、私の投稿に対する反論が掲載されました。新潟県の大学生だったと記憶しています。「雪国の清廉さをなめるんじゃない」と。毎日、鉛色の雪空のもとで暮らしているが、公共工事をもらって生きようとする新潟じゃないぞ、といった反論でした。

結構面白いなと思い、朝日新聞の紙面を通じて何度かやりとりした覚えがあります。

―そのころから新聞記者を志望していたのですか。

 いえ、大学時代は司法試験を目指すサークルに入っていました。弁護士か検事になろうかと考えていました。2年くらいは一生懸命に勉強しましたが、自分には合わないかな、山登りの方がいいなと。それで、山登り、縦走に夢中になりました。

―入社のきっかけは?

 友人から「朝日新聞が実力セミナーやるから一緒に行かないか」と誘われました。そういえば、新聞は好きだったなと改めて考え、セミナーに参加したのが縁で内定をもらいました。

 いろいろな大学が集まったマスコミ勉強会とか、ジャーナリズム研究会がありましたが、そういうのには入りませんでした。その世界が分かっていないのに、何か分かった気になって議論するのは嫌。そういう記者にはなりたくないなと思いました。

理論より実践が大事

―根っからの社会部畑ですね。

 理論より実践の方がまずは大事だな、と思い続けてきた記者生活でしたね。そういうことを生意気にも公言してきたので、特ダネを取って実践をさらに見せることを続けなければと。振り返ってみると、それが記者としての成長のエネルギーだったかもしれません。大きな事件があるたびに投入されてきました。

―記者として一番大切な資質は何でしょう。

 コミュニケーション能力だと確信しています。それも狙って作ったものでなく、育った環境、学んだ環境の中で実体的に身に付けたコミュニケーション能力。個性は人それぞれ違いますが、どこか憎めない、人を包み込むような素養が必要だと思います。

― 最後に若い記者、未来のジャーナリストにエールを。

 新聞業界が厳しくなってから門を叩いてくる人たちはこれまで以上に優秀で情熱を感じます。人と交わり、裏付けして肉付けしていく仕事の面白さ、この業界が一番だと思う。コミュニケーション能力を磨き、いつも世の中の変化を見る癖を身に付けてほしい。

 All is well!(きっとうまくいく!)

※朝日新聞デジタルの記事はこちらから。

 ※朝日新聞群馬県版デジタルの記事はこちらから。

県立前橋高校出身、朝日新聞社長

 角田克(つのだ・かつ)1965年、渋川市生まれ。群馬県立前橋高-早稲田大法学部卒。1989年、朝日新聞社に入社、東京本社社会部長を3年務める。常務、専務を経て、2024年6月から現職。趣味は街歩き。