interview
聞きたい
【聞きたい せきぐちあいみさん▶1】
世界で活躍するVRアーティスト
2023.08.13
メタバース(仮想空間)に描くデジタルアート。ゴーグルを装着しコントローラーを絵筆のようにして3D作品を仕上げる。VRアーティストの元祖として世界を舞台に活躍する、せきぐちあいみさん。VRアートの可能性を教えてー。(聞き手:クライム社長 金井修さん)
撮影:小田駿一
日本の文化 世界へ発信
―ドバイでVRアート個展を開いたそうですね。
Web.3.0、メタバースの世界で文化的交流を大切にしながらアートを制作してきましたが、新たな挑戦として、ドバイ最大のモールであるドバイモールで5月12日から1カ月間、デジタルとフィジカルを融合した個展を開いてきました。ライブペインティングショーもしてきました。
最新の裸眼3DディスプレイやVR、ARデバイスを駆使した体験をさせていただき、個展に合わせてアート作品のNFTを1年ぶりに販売しました。
―世界各国でパフォーマンスを披露していますね。
メタバースやオンラインを活用して仕事しているので、ドバイに限らずいろいろなところを転々としながら生活したいと思っています。
これまで10カ国くらい行きましたが、どこでも『ワォ』と素晴らしいリアクションをいただきました。国境を越えて人間をワクワクさせる、想像力を掻き立てる。これがVRアートの魅力なんだなと確信しました。
―国によって反応に違いがありますか。
まったくありません。差がないのが素晴らしい。VRの魅力でしょう。国籍も年齢も関係ない。90歳過ぎたお年寄りも、小さな子どももすっごく楽しんでくれます。
―龍とか滝とか、日本をモチーフにした作品が多いですね。世界を見据えた戦略ですか?
私自身、もともと日本庭園が好きで、神社・仏閣とか、盆栽に興味を持っています。VRアートをやって気付いたのですが、日本人は単体ではなく、周りの空間との調和を考えた造形美を大事にしています。皮膚感として持っています。これはVRとの相性が抜群にいいんですね。
日本の文化の魅力を日本人だけでなく、すべての人に見て、感じてほしい。
『海外受けする』なんて性もない考えで作品を作っても見透かされてしまいますよ。純粋に日本の文化の魅力を感じてほしいと願っています。
AIやロボットが登場して精度の高い作品が造られるのは間違いない。その分、私たちは人間らしい情緒や感性、自然の美しさを大事にしていかなければなりません。
―アート以外にもVRの可能性はありますか。
そうですね。地域が違っても同じ教育を受けられるようになったり、障がいがある人やお年寄りも生活をより楽しめます。
介護施設で体験してもらったのですが、普段、段差があるところには行けない人が、VRで疑似的に行けるようになり、大喜びしてくれました。最初は『私はいいよ』なんて嫌がっていたおばあちゃんが『何、これ。すごい』って喜んでくれました。
首の可動域、手の可動域が広がる効果もあるようですよ。
―それはすごい。寝たきりの人でも世界旅行が楽しめますね。
そうですね。世界中どこでも、それこそ宇宙でも行けますよ。
もちろん、実際に移動して行きたいところに行く、会いたい人に会うのが一番です。でも、それができなくても、疑似的に病室を飛び出して旅をし、アバターで孫に会う。そんな豊かな経験ができるのです。
202X年、月で個展開きます
―先駆者として道を切り開いてきました。これからどんな夢を描いていますか?
月でも火星でも個展を開けたらいいな(笑)。できそうですね、お金があれば…。
―それは楽しみ。「202X年、せきぐちあいみVR個展inMOON」なんて案内が来ることをお待ちしています。
私は常に新しいことに挑戦してきました。いまの自分では想像できないことをやっていると思います。
将来、病気やけがで体が不自由になっても、メタバースを使って病室から世界と繋がっていきます。
創作活動は生涯続けたいし、死んでからも私のアバターが個展を開いているでしょう。せきぐちあいみは永遠に不滅です(笑)。
せきぐち・あいみ
神奈川県生まれ。女優、モデル、ダンサー、歌手、YouTuberを経て、2016年からVRアーティストとして活動を始める。世界各国でVRパフォーマンスを披露。2021年、NFTオークションで作品が1300万円で落札された。「2021 Forbes Japan 100」に選出される。
かない・おさむ
1961年、沼田市生まれ。システム開発のクライム社長。プログラミング教育先進県を目指し、「ぐんまプログラミングアワード」を立ち上げる。