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聞きたい

【聞きたい高橋万太郎さん▶上】
小さな蔵の至極の醤油集める

2023.05.30

【聞きたい高橋万太郎さん▶上】
小さな蔵の至極の醤油集める

醤油といえば、一般的なのは一升瓶か貯蔵しやすい1㍑ボトルか。醤油蔵を模したこちらの店舗に並ぶのはすべて100㍉㍑の小瓶。テレビCMで聞いたような名の知れた銘柄はありません。全国の小さな蔵で大事に造られてきた至極の醤油ばかり。醤油の「造り手」と「使い手」を繋ぐ「繋ぎ手」、醤油職人代表の高橋万太郎さんに醤油への思いを聞きました。

料理で使い分けをお薦め

—かわいい小瓶が大集合しています。

東北から九州まで全国52の蔵から100銘柄ほど集めています。

日本人で醤油が嫌いな人はいないでしょう。でも、日本酒のように味を比べる、「利き醤油」をする人はあまりいない。いつも、どんな料理にも同じ醤油を使う人も多い。

自分好みの醤油に出会ってもらいたいし、料理によって使い分けをしてほしい。そんな願いから、割高にはなりますが小瓶で提供しています。気に入った醤油があれば、蔵元に連絡して大きな瓶を注文していただけばいいので。

—地方によってその土地に根付いた独特の醤油があり、名物料理に合いますね。

白醤油や薄口醤油は白ワインのイメージ。素材の彩りや風味を活かしてくれます。

何にとも相性がいいのは甘口醤油と濃口醤油。ただ、甘口は好き嫌いが分かれますね。

熟成期間が2年から3年と長い再仕込み醤油や溜醤油は赤身の魚や脂身の強い肉と合わせると一体感を楽しめます。

—確かにお吸い物には白醤油、照り焼きには溜醤油が合います。

そうですね。もっと、「醤油の使い分けを当たり前にする」ことを目指し「醤3(ショウスリー)」というプロジェクトに取り組んでいます。

具体的には焼肉店にあるような三口皿を使い、同じ料理でも3種類の醤油で味わってもらいます。例えば、刺身の盛り合わせなら白身に淡口、赤身に溜、濃口をオールマイティーに使ったり、赤身や白身も意外な出会いを楽しんだりできます。

自分の言葉で語れる蔵元

—当たり前のように使っている醤油ですが、奥が深いですね。少し気を付けるだけで、食生活が豊かになりそうです。取り扱っている銘柄は高橋さんが仕入れているのですか。

日本全国の醤油蔵を回っています。これまで15年間で400を超えています。ほとんどアポなしで訪れ、「これは」と思う醤油を卸してもらうよう、交渉します。

どこも100㍉㍑の小瓶で卸す経験はなかったはずですが、私の思いを伝えると、快く引き受けてくれる蔵が多かったですね。

日本の醤油は8割を上位30社が造り、残り2割を1000の小さな蔵で仕込んでいます。魅力的な蔵はまだあるはず。新たな出会いが楽しみです。

—いろいろな蔵に足を運び、学んだことはありますか。

美味しい醤油を造っている蔵は直感でだいたい分かります。若い人が多く活気のある蔵、掃除が行き届き整理整頓されている蔵はいい醤油を造っています。あくまで個人的な感想ですが。

それと、自分の言葉で自分の醤油を語れる蔵元の醤油は間違いなくいいですね。ただ「地元の原材料を使っています」だけでなく、何でそうしているのか、どんなこだわりを持っているのか、きちんと説明できる蔵元の話を聞くのは楽しいですね。

▲お薦めの3種類。料理によって使い分けを

たかはし・まんたろう 1980年、前橋市生まれ。群馬大附属中-前橋高-立命館大経済学部卒。精密光学機器メーカーに3年勤務した後、2007年に起業する。直営店の「職人醤油」は前橋本店と松屋銀座店がある。