interview

聞きたい

【聞きたい松本健さん】
群馬の豚肉料理 海外へ

2023.05.26

【聞きたい松本健さん】
群馬の豚肉料理 海外へ

「安心とおいしさをまごころこめて」。国産豚のもつ煮とホルモンの製造・販売を主力とするグルメフレッシュ・フーズ。新型コロナ、原材料費の高騰と逆風にさらされる中、飲食店経営や新工場建設と攻めの姿勢を崩さない。あくまで前を目指す松本健社長。源泉はどこにあるのか。

コロナ、原材料費高騰が直撃

―新型コロナは食品産業を直撃しました。影響はどうだったでしょう。

うちはスーパーや量販店への納入が7割、飲食店が3割です。コロナでは飲食店向けがぐっと落ちたが、内食の需要が増え、ある程度の落ち込みはカバ-できた。

子どもが家に待機となって従業員が出社できないケースがあり、生産体制を正常にするのに苦労はしましたが。でも、これはいい経験になった。非常事態への準備となったでしょう。

―原材料費の値上げが追い打ちをかけています。

こちらの方がかなり厳しい。原材料費に加え、光熱費、人件費が軒並み上がっています。すべて製品の価格に転嫁できればいいが、そういうわけにもいかない。売り上げは前年並みを確保できたが、最終利益は大幅に落ち込んでいます。

これが一時的なものでなく、スタンダードというか、より値上げの傾向が強くなると受け止め、乗り越えていくしかない。社員が主役であり、人件費も上げていく必要がありますしね。

▲起業仲間は仲がいい。宮崎雄一さん、松本健さん、小林新一さん(左から)

名店「太閤」の暖簾守る

―焼き肉の名店として長く親しまれながら閉店した「太閤」の事業を継承しました。

専務である弟が「好きだった店を守りたい」と言い出し、ちょうど新事業を模索していたこともあったので。肉は得意分野ですから。申し入れしてから、しばらく音沙汰がなかったのですが、忘れたころに返事が来ました。

地元の人や常連さんの思い入れを強く感じる店でしたので、「同じ形でやらせてください」とお願いした。屋号もレシピも引き継ぎたいと。

承諾していただき、我々は飲食店のノウハウがなかったので、しばらく手伝ってもらった。前のオーナーはいまもトレーナーのような感じで店に来て指導してくれています。

―個人経営の飲食店の引き継ぎとして、理想的な形でしたね。

味のある昔からの飲食店が姿を消し、みんなFC店になってしまったら寂しいですからね。

これですぐに外食部門に本格的に進出するというわけにはいきませんが、いい経験になりました。コロナで厳しいですが、暖簾は守っていきます。

▲「太閤」の暖簾を守るを語る松本さん

学生時代から起業夢見る

―経営の話に移りましょう。松本社長は2代目になるのですか。

いえ、会社は私が設立しました。大学時代から起業したいと考えていて。父が病気になり家業に入りましたが、25歳の時にいまの会社を設立した。工場を作り、製造業として新たに出発しました。父は反対していましたが、最終的には甘やかせてくれました。

―工場を作り、会社組織とするには資金調達をはじめ大変だったのでは。

金融機関から融資を受けるため、事業計画を策定するなど初めてずくめの経験だった。

融資は1億円近く。すごい金額だなと驚きながらも、たとえ失敗しても一生働けば返せるくらいに気楽に考えていました。

―経営は順調でしたか。

最初は自分も現場に入り、目の届く範囲で事業を進めていたので、売り上げはどんどん伸びていった。でも、10年くらいして厳しい状況になった。何とか建て直さなければと、セミナーを受けたりしたけど、まったく効果なかった。

そんなとき、社会人経験者を対象とするビジネススクール、グロービス経営大学院の存在を知り、一念発起して経営学を学んだ。包括的、体系的にビジネスを学べ、すごく自信になりました。何に手を付ければいいか鮮明になり、経営者として自己変容できたのは大きかったと思います。

▲松本さんは勉強家。グロービス経営大学院でも学んだ

―群馬イノベーションスクール(GIS)にも入りましたね。

主宰者である田中仁(ジンズホールディングスCEO)さんの理念に共感しました。ビジネスモデルを学ぼうとか、人脈を作るとかではなく、前橋のために何ができるか、探したかった。

GISに入ってみて、地域のために何かしたいと熱く思う人たち、花助の小林新一さんであり、ペスカの宮崎雄一さんと出会い、より一層、そういう思いを強く抱くようになりました。

―互いに刺激になっているようですね。

ビジネスは違うけど、経営に対する真摯な姿勢は自分を鼓舞することにつながる。

小林さんを理事長に卒業生の組織、GISアドバンスを作りました。同じ志を持って学んだ者同士で学びを継続し、力を合わせて地域のために貢献できればうれしいですね。

―会社経営はどのように展望していますか。

新工場の建設を計画しています。厳しい経営環境にあっても次のステージを見据えたい。売り上げを拡大するためには設備投資は欠かせない。いまでもキャパオーバーであり、2、3年後の完成、稼働を目指している。無人化、機械化も進めなければならないでしょう。

わが社の販路は群馬県内をはじめ東日本が中心ですが、これを西日本、さらに海外に拡大したい。扱う商品も食肉に限らず、食品全般に広げたいと考えている。

食を通じて世の中に笑顔を増やすことが私どもの願いです。会社が地域に必要とされ、地域もお客さまも社員も幸せになれるよう努力していきます。

▲主力のもつ煮。東日本一円で販売している

▲「ファミリー太閤」人気のカルビとロース

まつもと・たけし 1971年、前橋市生まれ。元総社中-前橋商―上武大卒。96年、自営業だった家業を会社として設立する。主要業務は国産豚のもつ煮とホルモンの製造・販売。小売業や飲食店経営も始める。グロービス経営大学院で経営学修士を取得。