料理倶楽部 紫
十割蕎麦の豪華すぎるセット

屋号が『美味しんぼ』の「美食倶楽部」を彷彿させ、Ｃ級グルメを愛する身として敷居が高過ぎた店でしたが、昼時に勇気を出して紫色の暖簾をくぐりました。

海原雄山とは真逆に女将の野村たき子さんが愛想よく迎えてくれます。ほっと一安心。お薦めを聞くと、「『海鮮』ね。原価が高くて本当は薦めたくないのだけど」と教えてくれました。

ランチは十割蕎麦とご飯物のセットが基本です。常連らしき隣のお客さんの穴子天丼、あまりの大きさに思わず目を奪われました。

そうこうするうちに海鮮セットが配膳されます。瑞々しい十割蕎麦に満足。これに刺身３点盛りとご飯が付いてきます。いや、豪華です。

蕎麦からいただきます。黒みがかった蕎麦は風味が強く、喉越しも十割とは思えないほど。やや不揃いの太さ、長さが手打ちらしくて好みです。

刺身はハモ、タコと酢締めのサーモン。ハモに京料理の粋を感じました。京の夏を感じます。

どれも美味しかったのですが、感動したのは刺身を飾る「あしらい」の見事さです。ことにワサビを添えた紫ダイコン。花びらのように切られています。

調理も手掛ける女将さんは果物に彫刻を施すカービングの先生。あしらいはお手の物ですね。しかも、ダイコンは「味いちばん紫」という鎌倉野菜で、自ら栽培しているとか。いや、びっくりです。

さらに驚かされたのは遅れて登場した真鯛の甲焼き。これも付いてくるとは。唇や目の裏側の部分も含め、余すことなくいただきました。

デザートの「まるごともも」も絶品でした。種の部分にカスタードを詰め、ゼラチンでコーティング。茶碗に入ったコーヒーは抹茶のように茶筅で立てています。結構なお点前でした。

店を開いて34年。夜は予約で会席料理を楽しめるそうです。