interview
聞きたい
井坂さん「楽しみ、苦しみ書く」
前橋で萩原朔太郎賞贈呈式
2026.10.31
現代詩を対象にした第34回萩原朔太郎賞の贈呈式が10月31日、前橋文学館で開かれ、井坂洋子さん(76)に賞状と正・副賞が贈られた。井坂さんは「これからも詩を書くことを楽しんで、楽しむだけでなく苦しんで書いていきたい」と喜びの言葉を語った。
『文鳥』で最高齢受賞
井坂さんは母との死別を軸に生と死、母と娘の繋がりを見つめた詩集『文鳥』で朔太郎賞を受賞した。過去の受賞者で最高齢だった。
贈呈式では小川晶市長から賞状を受け取った後、萩原朔美前橋文学館特別館長からブロンズの萩原朔太郎像を渡され、「重いですね」と笑顔で語った。副賞は賞金100万円が贈られた。
▲賞状を手にする井坂さん
▲朔太郎像の重みに驚く
受賞者の挨拶では、「萩原朔太郎は『近代詩の父』と言われているが、現代詩の源のような詩人。その詩人の名が付いた賞をいただけるのはうれしく、光栄に思います」と感謝し、さらに真摯に詩作に取り組んでいくことを誓った。
母の看取りが詩作に影響
井坂さんは贈呈式後、集まった100人近いファンを前に「日常生活と詩」と題して記念講演した。
戦時中、特攻隊員が出撃の前夜だけ使える布団の綿入れをした体験を綴った母親のエッセイを朗読した。
何気ない日常生活や四季の移ろいを短歌に詠んでいた母親から、「あなたの詩は生活に根付いていないからダメだ」と批判されたことにふれ、「いま思うと、母は心の奥底に恐怖があり、拭い難かった。それで平坦な日常を書くことが喜びだった」と理解を示した。
▲母親との思い出を語る
今回の詩集で等身大の自身を描いたのは「母を看取ったのが大きかった。作り変えることは一切なかった」と強調。反響が大きかったのは「みんな経験すること。介護であり看取り。深く(詩の世界に)入っていけると思う」と分析した。
井坂洋子(いさか・ようこ)
1949年12月、東京都生まれ。上智大文学部国文科卒。詩集『GIGI』でH氏賞、詩集『地上がまんべんなく明るんで』で高見順賞、『箱入豹』で藤村記念歴程賞受賞、『嵐の前』で鮎川信夫賞、『七月のひと房』で現代詩花椿賞をそれぞれ受賞している。評伝に『永瀬清子』、エッセイ集に『詩の目 詩の耳』、『詩はあなたの隣にいる』がある。東京都豊島区在住。


-750x563.jpg)