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宮沢賢治の祈りを原画で
小林敏也『雨ニモマケズ』展

2026.06.14

宮沢賢治の祈りを原画で
小林敏也『雨ニモマケズ』展

 宮沢賢治の詩『雨ニモマケズ』を、小林敏也さんの力強い原画で味わう展覧会「宮沢賢治『雨ニモマケズ』 小林敏也 画本原画展」が、前橋市敷島町のフリッツ・アートセンターで開かれている。会期は7月12日まで。入館無料。

「サウイフモノニ」への問い

 白い壁に、黒と生成りの世界が静かに並ぶ。人物、動物、風、雪、野菜。小林敏也さんがスクラッチ技法で描いた原画は、絵本の挿絵でありながら、版画のような強さを持つ。

 展示されているのは、宮沢賢治の詩『雨ニモマケズ』をもとにした画本の原画。パネルに水張りされた原画が壁に掛かり、紙の質感や線の勢いがそのまま伝わってくる。

 「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」。あまりにもよく知られた言葉だが、原画を前にすると、詩はまた違う表情を見せる。そこにあるのは、ただ我慢する人、善良な人の姿ではない。迷いや苦しみを抱えながらも、他者のために立とうとする人間の意志だ。

戦争の時代に読む賢治

 フリッツ・アートセンター代表の小見純一さんは、今この展覧会を開く意味をこう話す。

 「世界で戦争が起こっている今だからこそ、賢治の言葉が必要だと思ったんです」

 『雨ニモマケズ』は、賢治が病床で書き留めた詩として知られる。自らの死を意識する時間の中で、それでも他者の幸せを願い、「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と結んだ。

 「雨ニモマケズは勝ち負けじゃない」と小見さん。「負けない」という言葉を、競争や強さとして受け取るのではなく、賢治が本当に伝えたかったことを、それぞれが自分なりに汲み取ってほしいという。

大人を魅了する「画本」

 小林敏也さんは1947年、静岡県焼津市生まれ。東京藝術大学美術学部工芸科を卒業後、本の装丁や挿絵を手がけ、東京・青梅に「山猫あとりゑ」を構える。

 1979年の『画本 宮澤賢治 どんぐりと山猫』以来、宮沢賢治の作品を独自の視点で描く「画本 宮澤賢治」シリーズをライフワークとして続けてきた。スクラッチによる鋭い線、紙の風合いを生かした画面、民俗的で幻想的な造形は、子どものための絵本という枠を越え、多くの大人を惹きつけている。

 2003年には第13回宮沢賢治賞を受賞。『注文の多い料理店』や『雪わたり』などの挿絵は、小中学校の国語教科書にも採用され、世代を超えて親しまれている。

 今回の展覧会について、小見さんは「小林さんも以前から、フリッツ・アートセンターで宮沢賢治の展覧会をしたかったと言ってくださった」と明かす。小林さん自身が水張りした原画を借り受け、実現した。

 混沌とした時代に、どう生きるか。作品の前に立つ人の心に、静かに問いを投げかける。

宮沢賢治『雨ニモマケズ』 小林敏也 画本原画展
会期:~2026年7月12日(日)
会場:フリッツ・アートセンター/ギャラリー
住所:前橋市敷島町240-28
時間:11時~18時
休館日:火曜(祝日の場合は翌日)
入館料:無料