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朔太郎忌で親子共演
萩原朔美さん、すみれさん

2026.05.09

朔太郎忌で親子共演
萩原朔美さん、すみれさん

 前橋ゆかりの詩人、萩原朔太郎を偲ぶ「第54回朔太郎忌」が5月9日、昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)で開かれた。朔太郎の命日に合わせて続く恒例行事。第2部のリーディングシアター「早く家に帰りたい。/柵の向こうの朔太郎」では、朔太郎の孫、萩原朔美さんと、ひ孫の萩原すみれさんが共演した。
(取材/阿部奈穂子)

ひ孫が歩く散歩道

 舞台の上で菫が歩き出す。追いかけるのは、見たことのない「ひいじいちゃん」の背中だ。
 朔太郎はこの道で何を見て、何を感じていたのか。菫の歩みに合わせるように、遠い詩人の輪郭が少しずつ近づいてくる。
 演じるのは、朔太郎の実際のひ孫である萩原すみれさんだ。

▲前橋の風景を移しながら、朔太郎の散歩道を歩く菫(写真右)

 朔太郎を演じたのは俳優、田中要次さん。「帰る場所を見つけたい」と叫ぶその背中には孤独や不安がにじむ。

 舞台では過去と現在が交差し、菫の歩く時間の中に、朔太郎の気配が差し込んでくる。

▲時間を超えて。朔太郎役の田中要次さん(写真右)と

 朔美さんが演じたのは放浪の俳人、山頭火。朔美さんとすみれさん親子は同じ舞台に立ちながら、正面から絡む場面はほとんどなかった。
 二人が近づくのはただ一度、すれ違う瞬間だけ。「親子で絡むのはやりにくいだろう」。脚本を手掛けた加藤真史さんの粋な計らいだった。

▲朔美さん(写真左)は山頭火を演じた

ビビらないのが共通点

 それでも、二人はどこか似ている。すらりとした立ち姿、少し高めの声。その延長線上に、朔太郎の姿まで想像してしまう。
 すみれさんのスタイルの良さが際立ったのは、劇中でひらひらと踊る場面だった。「3歳から高校生までクラシックバレエを習っていたんです」と話す。現在は劇団青年座の準劇団員として活動している。

▲華麗な舞を披露

 「親子というより役者同士という感じだよ」と終演後、照れ笑いを見せた朔美さん。役者としてのすみれさんの魅力について尋ねると、「度胸があるところ。どんな場面でもビビらない。僕と同じ」。
 すみれさんは父との共演について、「生きてるうちに同じ舞台に立てて良かった」と笑った。

▲親子共演した朔美さんとすみれさん

 第1部では小説家の川上弘美さんと萩原朔太郎研究会会長の松浦寿輝さんが登壇した。朔太郎の詩や好きな作家について語った。
 川上さんが好きだと挙げたのは、7行の短い詩「天景」。「自然に詩のフレーズを頭の中で繰り返してしまう」と川上さん。
 松浦さんは「殺人事件」を挙げた。音律が心に染み入り、忘れられなくなるという。

▲第一部の対談

 前橋が誇る詩人は今年没後84年を迎えた。