interview
聞きたい
ブルーボーイ事件 世界へ広がる
飯塚花笑監督に聞く<前編>
2026.04.17
前橋市在住の映画監督、飯塚花笑さんの『ブルーボーイ事件』が世界で反響を広げている。4月12日には米シカゴで開かれた「アジアン・ポップアップ・シネマ2026」で長編部門の最高賞を受賞した。イギリスでは34カ所を巡回上映し、台湾でも劇場公開された。国や言葉を超えて届くこの作品を、監督は海外でどう受け止めたのか。現地での反応や手応えを聞いた。
(取材/阿部奈穂子)
- 目次
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- 1. 受賞で感じたアメリカのいま
- 2. 配信でもっと広く
- 3. イギリス、台湾へ広がる上映
- 4. 違う国なのに泣く場所は同じだった
受賞で感じたアメリカのいま
――シカゴの映画祭でグランプリ受賞を知った瞬間、何を思いましたか。
真っ先に浮かんだのは、アメリカという国の情勢でした。いま、性的少数者に対する風当たりが強まっている国でもある。そんな場所でこの作品が受賞したことに、まず意味を感じました。
『ブルーボーイ事件』が描くのは、個人からの差別や中傷だけではない。国や大きな組織から理解されない理不尽さです。その痛みがいまのアメリカの観客にも響いたのではないかと思いました。
――受賞を知らされたのはいつでしょう?
4月12日です。映画祭で上映されることは聞いていましたが、正直、詳しい動きまでは追っていなかった。配給会社から「グランプリを取りました」と連絡が来て知りました。そこから慌てて映画祭のことを調べました(笑)。
▲アジアン・ポップアップ・シネマ2026授賞式(映画祭HPより)
配信でもっと広く
――配信も始まりますね。
Netflixで5月15日からサブスク形式の独占配信が始まります。登録していれば追加料金なしで見られます。僕自身も普段Netflixを使っているので、あの「ドドーン」という冒頭のロゴと一緒に自分の映画が流れるのは、やっぱりちょっと興奮しますね。
ほかの配信サービスは課金型で4月15日からスタートしました。
▲「Netflixでの配信が楽しみ」と話す飯塚監督
イギリス、台湾へ広がる上映
――作品はどのように上映されていったのでしょうか。
最初は昨年10月の東京国際映画祭ガラ・セレクション選出です。11月から国内公開が始まりました。
海外は今年2月、イギリスの国際交流機関の企画で34カ所を巡回上映したのが最初です。私も現地に行きました。続いて3月に台湾で劇場公開され、15館規模からスタートして、いまも上映が続いています。
――作品名も国によって変わるそうですね。
面白いですよ。イギリスでは『Blue Boy Trial』、台湾では『藍色男孩事件』。台湾では「青」を「藍」で表現します。タイトル一つとっても、国ごとの言葉の感覚が出るんだなと思いました。
▲台湾でのポスター
違う国なのに泣く場所は同じだった
――イギリスでの上映に立ち会って何を感じましたか。
映画って世界の共通言語なんだな、ということです。日本のある時代の、ある少数の人たちを描いた作品なのに、劇場で同じところで笑い、同じところで泣く。国や文化は違ってもアフタートークやQ&Aで話してみると、心に残ったセリフや涙が出た場面はほとんど変わらない。文化や国境を越えて、同じ一本の映画で同じ気持ちになれる。その空間はすごく平和で豊かでした。
――どの場面が特に響いたのでしょう。
やはりアー子の死、それから最後のサチの長い証言の場面です。あの二つは国を超えて強く届いていました。サチ役の中川未悠さんもアー子役のイズミ・セクシーさんも映画初出演ですが、その表現がそのまま世界に届いたのはうれしかったですね。
▲証言をするサチに、海外の観客も引き込まれた
――海外の観客から、どんな質問が多かったですか。
必ず聞かれたのは、「日本で性的少数者はどう暮らしているのか」ということです。進歩している面もあるが、まだ課題は多いと答えました。イギリスでは「私たちの方がずっと進んでいる」とはっきり言われました。
台湾も同性婚を早くから制度化していて、街中で同性カップルが手をつなぎ、結婚式も自然に行われている。そういう景色を見ると、日本は遅れていると痛感します。
▲撮影監督の芦沢明子さん(左)と打ち合わせをする飯塚監督
後編では、作品に映る前橋の風景と、次作への思いを聞いた。


