watch

見たい

【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.53】
猫じゃなくて狸

2026.01.03

【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.53】 
猫じゃなくて狸

 

 店舗や家の玄関に、信楽焼の狸が愛嬌を振り撒いている。最初は、なんで狸のお出迎えがあるのだろうか、不思議だった。店の人に聞いたら、商売繁盛、千客万来、の願いが込められているという。招き猫にも、ライバルがいたとは知らなかった。

 一般住宅の玄関にあるのは、家内安全とか、金運を呼び込むためらしい。どちらにしても、入り口に、呼び込むためのものを設置している訳だ。

 

 他県では、柊鰯とか、沖縄のシーサーのように魔除けを設置する家がある。盛り塩なんかもそうだろう。

 つまり、外部の侵入を防ぐタイプと、外部と内部の相互侵食タイプがある訳だ。狸の前橋は、外部を排除しない気風の土地柄なのだ。臨江閣も招き入れるための場所だ。おもてなしの伝統が、狸の置物に現れているのかも知れない。

Sakumi Hagiwara

萩原朔美(はぎわら・さくみ)

 1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮。世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵されている。著書多数。多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長(現在は特別館長)。2022年4月から金沢美術工芸大客員教授(現在は客員名誉教授)、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。