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朔太郎賞に大崎清夏さん
『暗闇に手をひらく』で受賞

2025.09.05

朔太郎賞に大崎清夏さん
『暗闇に手をひらく』で受賞

 現代詩を対象にした第33回萩原朔太郎賞は大崎清夏さん(43)の『暗闇に手をひらく』に決まった。選考委員会が9月5日、前橋文学館で開かれ、候補作に推薦された6作から選ばれた。大崎さんは「敬愛する詩人の名を冠した賞をいただき、本当に光栄です。この受賞をこれまで表現活動を共にしてきたすべての方に伝えたい」と喜びのコメントを寄せた。

清冽な抒情詩 心地よい作品

 大崎さんは月刊誌「ユリイカ」投稿欄の年間最優秀賞に与えられる「ユリイカの新人」に選ばれ、詩壇にデビューした。絵本や朗読劇、作詞などマルチに才能を発揮している。

 受賞作の『暗闇に手をひらく』は2025年1月1日、リトルモアから発行した第5詩集。コロナ禍の最中にしたため、戦争や地震、地球上で起きているこんなな状況下にある人に救いを述べるような31篇が収められている。四六判変形、136㌻。

▲受賞作を発表する小川晶市長

▲受賞作『暗闇に手をひらく』

 朔太郎賞決定記者会見で、選考委員を代表して萩原朔太郎研究会会長の松浦寿輝さんは「一言で言えば清冽な抒情詩。1人の詩人の現生での立ち振る舞いを豊かな詩情とともに定着されている。読んでいてとても心地よい作品」と講評した。

▲朔太郎賞選考委員。右から3人目が松浦さん

 選考会は5人の選考委員がそれぞれ別の作品を推し、選考が難航した。

 候補の6人中5人が女性で、受賞者も第30回の川口晴美さんから4年連続で女性となった。

 一昨年の受賞者で今回、初めて選考委員になった杉本真維子さんは「大崎さんの作品は構成の面からも美しい仕上がりになった。大変勉強になりました」と評価した。

▲講評を述べる杉本さん

 候補作全体の印象について、前橋文学館特別館長の萩原朔美さんは「言葉が優しい。平明な言葉が多く使われている。言葉を洗い直すのは詩人の役目だから、使い古した手垢の付いた言葉を洗い、心に響く言葉にしている」と講評した。

▲「詩人は言葉をロンダリングする」と語る萩原さん

11月1日に朔太郎賞贈呈式

 萩原朔太郎賞は日本近代詩に大きな功績を残した前橋市出身の詩人、萩原朔太郎の業績を顕彰するとともに、近代詩の発展に寄与することを目的として、市制施行100周年の1993年に制定した。

 主催は前橋市と萩原朔太郎賞の会。東和銀行が協賛している。

 今回は昨年8月1日から1年間に発表された作品を対象に選考した。

 大崎さんには正賞としてブロンズの萩原朔太郎像と副賞100万円が贈られる。贈呈式は11月1日、前橋文学館で開かれる。

 ※大崎さんの写真は黒川ひろみさん撮影。

中原中也賞を2014年受賞

 大崎清夏(おおさき・さやか)1982年、神奈川県生まれ。早稲田大文学部卒。2011年にデビュー、2014年、第2詩集『指差すことができない』で中原中也賞を受賞する。奥能登国際芸術祭パフォーミングアーツ「さいはての朗読劇」(2022、23年)の脚本・作詞、舞台劇『未来少年コナン』(2024年)の劇中歌歌詞、オペラ『ローエングリン』(2024年)の日本語訳修辞を手掛けるなど、多彩な分野で活躍している。