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西洋亭 110年の歴史に幕
前橋の「元祖ソースカツ丼」

2025.06.02

西洋亭 110年の歴史に幕
前橋の「元祖ソースカツ丼」

 1915(大正4)年創業のソースカツ丼の店「西洋亭 市」が5月末で閉店、110年の歴史に幕を下ろした。長く市民に愛された飾り気のないソースカツ丼。おしゃれな街並みとなった馬場川通りで異彩を放つレトロな木造の店舗。口福を感じさせ、喧騒を忘れさせてくれる貴重な空間がなくなった。

継ぎ足しの辛口ソース

 創業以来、継ぎ足されてきたソースは酸味が効いて辛口。店の命だった。ヒレ肉を叩いたカツは丸くて薄め。ラードで揚げ、香ばしくてサクサクだった。

 1枚入りで490円、2枚でも600円という安さも魅力。昼時は近くの会社員や昔からの常連客でいつもにぎわった。

▲110年変わらぬ素朴なソースカツ丼

▲汁ソースカツ丼。夏は冷製が人気だった

 第一次世界大戦の最中に開店した店は創業家から別の飲食業者に経営が移った後、2007年から小菅絵里さんに引き継がれた。

 子育てに追われながら暖簾を守り続けた小菅さん。「子どもや家族のために料理を作って食べてもらっている感覚なの」と愛情を込めて腕によりをかけた。

▲観葉植物が多く、落ち着けた店内

 閉店の告知は事前にしなかった。閉店後、入口に貼り紙を出した。張り紙には「2017年3月より18年3ケ月 本当にかけがえのない時間でした この店を卒業し違う場所で又みなさんにお会いできる事を願っております」と綴られていた。

 通りがかって貼り紙を目にした常連の男性は「甘ったるくなく、すっきりしたソースはここくらい。肉も厚ければいいってもんじゃない。もう、食べられないと思うと本当に悲しい」と肩を落としていた。

▲入口にひっそりと張られた閉店を告げる挨拶

麦亭、元黒飴もなくなる

 馬場川通りはすっかり整備され新しい店が続々と誕生、人通りが多くにぎわいを復活させた。

 一方、釜揚げスパゲッティの「麦亭」が昨年12月に閉店、ファンを残念がらせた。

 国道17号沿いにある「元黒飴本舗 室橋商店」も6月27日に105年の歴史に終止符を打つ。

 古き良き前橋の名物が消えていく。