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県民会館は先人の贈り物
前橋工科大生が施設見学

2024.12.11

県民会館は先人の贈り物
前橋工科大生が施設見学

  存廃問題が取りざたされている群馬県民会館(ベイシア文化ホール)を建築学から考える見学会が12月11日開かれ、前橋工科大の学生や建築に関心の高い市民が普段は見られない舞台裏を含め半世紀以上前に建てられた名建築を見て回った。ホールを利用する音楽や演劇の関係者が存続を強く要望しているが、歴史的建造物の保護・活用の側面からも存続を求める声が高まりそうだ。

半世紀前の技術と誇りに感心

 見学会は前橋工科大建築学科の石黒研究室と臼井研究室の主催。石黒由紀、臼井敬太郎両准教授と県民会館職員の案内で館内の各施設を回った。

▲入口ロビーで会館についての説明を受ける学生たち

 大ホールでは舞台と客席から座席や通路、音響や照明を細かく調べた。舞台の下に隠された、せり出しの装置を置いた「奈落」も見学、半世紀前の最先端の技術と工夫に感心していた。

▲福沢一郎の緞帳。緞帳は大ホール、小ホール合わせて4種類

▲奈落を見学

 学生は授業の一環として、前橋市中心街に700席収容の架空のホールを設計することになっており、規模の近い小ホールを入念に調査した。「舞台と客席の一体感がいい」「後ろの席からも快適に見られる」と参考にしていた。

▲天井が特長的な小ホール

▲小ホールを舞台から見学

 「西側は凱旋門のような佇まいで、街づくりの起点とする強い意志が感じられる。住宅街に面した東側は優しい姿。重厚な正面と柔和な対照的な顔を持つ」と建築学的に絶賛する臼井さんは、「先人がくれた大きなプレゼント。どう活かすかは僕らの宿題になる」と学生に投げかけた。

 石黒さんは「前橋の街にとって重要な建物が存続の危機にある。見学して感動したことを外に向けて発信してくれるとうれしい」と期待した。

▲大ホールのロビー

▲4階からの景観

2025年4月以降は休止

 県民会館は老朽化が問題となり、2017年に大規模改修を計画したが、2020年、改修費に30億円かかることを主な理由に一転して廃止の検討対象となった。

 小ホールは2022年3月末で閉鎖され、大ホールは2025年4月以降の予約受け付けを休止している。

▲大ホール

▲舞台裏にはキエフオペラ来日時のサイン

 前橋市内では解体が決まった前橋テルサのホールが使えなくなっており、音楽や演劇の発表の場が激減している。市民団体が県民会館の存続を求めている。

▲ロビーに立つ分部順治の銅像

▲存続を望む声が多い

群馬県民会館(ベイシア文化ホール)

 県土整備の一環として、明治100年にあたる1971年9月に完成した。場所は1910年に群馬県主催の一府十四県連合共進会が開かれ、群馬大学のキャンパスが置かれた跡地。設計は後に最高裁判所や警視庁本庁舎を手掛けた岡田新一氏(故人)。鉄骨鉄筋コンクリート造、地上5階、地下1階。延べ床面積は1万3330平方㍍。大ホール(2000席)、小ホール(500席)のほか、リハーサル室、楽屋、展示室、会議室、和室がある。

▲礒部草丘の緞帳(小ホール)

▲全国的にも珍しい手動式の黒幕

▲天井にもデザインが施されたリハーサル室

▲多くの著名なアーティストも利用した楽屋

▲美しい造形が施された大ホールの天井

▲入口を入ってすぐに大きなガラス。屋内に居ながら外を感じる

▲美しい動線