激変した。少し前は、下車するとすぐ周辺地図を探して行き先ルートを検討したのに、今やスマートフォンに指示されてウロウロ歩き回る。そのうち街頭や駅から地図が消えてしまうかも知れない。
公衆電話もかなり少なくなっている。SNSの定着で、郵便受けは、手紙や新聞ではなくチラシの山だ。カメラも高性能機種以外駆逐されるかも知れない。
子供の頃は、トタンにペンキで手書きされた地図があちこちに設置されていた。公共のものがまだなかったのだ。
前橋市内の地図表示版は圧倒的な存在感がある。太いコンクリートの支持体の上に乗っているから、携帯片手に歩いていても、つい近寄って見てしまう。安心感があるのだ。
あの頑丈な立派な前橋の地図表示版は、街が人を積極的に案内しますという意志を表明するためにあるのだろう。その決意表明が立派な頑丈な作りとなって、現れているのである。
萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。著書多数。現在、多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長。