interview
聞きたい
【聞きたい 生形理菜さん▶2】
意識を変えた劇団四季のダンスレッスン
2023.07.25
30倍を突破して、劇団四季に合格した生形理菜さん。初舞台の思い出と、苦手だったダンスを克服した、あるできごとについて聞きました。(取材/阿部奈穂子)
ライトアップされた東京タワーに涙
―2011年4月、研究生として劇団四季に入り、その年の9月に『思い出を売る男』の花売娘で初舞台。わずか5カ月です。早いですね。
本当にラッキーでした。ある日、研究生のレッスンの場で小柄な女性に声がかかり、「オーディションを受けてみないか」と。それで、抜擢されました。花売娘は8歳の戦争孤児の役なんですが、当てはまるキャストがなかなか見つからなかったそうです。
―理菜さんの身長は何㌢ですか。
当時は148㌢です。いまは151㌢まで伸びました(笑)。毎日のレッスンのお陰でしょうか。
―そうかもしれませんね(笑)。初舞台の感想は。
とにかくがむしゃらで、訳もわからず、ほとんど記憶はありません。作品は浜松町の自由劇場で上演されていたのですが、帰り道、浜松町駅に向かう途中でライトアップされた東京タワーを眺めながら、「私はいま、東京で夢を叶えてるんだ」と、涙が出そうになりました。
私には私の良さがある
―入団当初はダンスが苦手だったとか。
とても苦手でした。周りには、3歳からダンスをやっていた人や、ロシアにバレエ留学していたなんて人もいて。どうしたって追いつけないような人たちに囲まれて、もう劣等感しかありませんでした。
―それを克服したのは?
当時、劇団四季のジャズダンスを担当していた先生のレッスンを受けたことがきっかけです。曲をランダムにかけていき、自由に踊るという課題でした。いろいろな基礎を積んできている仲間たちは少し戸惑っていました。逆に私はこうしなければいけないというものがなかったから、流れる曲に合わせて楽しく踊ることができたんです。先生は「もう駄目だっていうときになったら自分でやめなさい」とおっしゃったのでみんな、徐々にやめて行く中、私は最後まで残り、参加していた全員から拍手をもらいました。
―どんな風に感じましたか?
私には私の良さがあるんだと吹っ切れて、その日から前向きにダンスに取り組むことができました。今もダンスは決して得意ではありませんが、楽しいです。私は表現することが好きなので、ダンサーとしてのダンスはできないけど、物語の中の1ページを担う作品の中のダンスを踊るのは、すごく好き。それがミュージカルの中のダンスの楽しさだと思います。
また、一緒に踊る仲間たちとお客様、みんなで音楽や表現を共有し一体感を感じるときは、とても幸せな気持ちになります。
―今年で入団13年目。一番思い出に残っている役は何ですか。
いくつかあるんですが、2020年、コロナ禍に開幕した『ロボット・イン・ザ・ガーデン』のタング役は、私の役者人生を変えてくれたような気がします。人形浄瑠璃みたいに、一つのロボットを後ろで2人の役者が操るのですが、息を合わせるのが本当に大変で。すごく難しかったけれど、有意義な時間でした。タング役を経て、自分の体で表現することに立ち返ったとき、なんて自由で奥深いんだろうと、改めて感じました。
うぶかた・りな
1988年、伊勢崎市生まれ。前橋女子高―群馬大教育学部美術専攻卒。県内のデザイン会社勤務を経て、2011年4月、劇団四季研究所に入所。同年9月、「思い出を売る男」の花売り娘役で初舞台。「魔法をすてたマジョリン」のマジョリン、「王子とこじき」のトム・キャンティなどさまざまな役を演じる。