interview
聞きたい
【聞きたい萩原朔美×東出昌大1▶︎】
『月に吠える』朗読劇で共演
2022.11.14
俳優、演出家、雑誌編集者と多彩な顔を持つ前橋文学館の萩原朔美館長。モデルから俳優に転身し、舞台や映画、テレビで活躍する東出昌大さん。文学を愛する2人が没後80年にしてなお愛される詩人、朔太郎を語り合いました。
東出が半分、朔太郎が半分
萩原 5月の朔太郎忌で第一詩集『月に吠える』の刊行にいたるまでを題材にした朗読劇をしました。東出さんには朔太郎役で出演してもらいました。朗読しながら劇をするって、役者さんからすると大変だったでしょう。
東出 役者は舞台でも、映像でも事前に本読みをします。本番では台本を持つことはしません。お客さまの前で本読みをするのは初めてでした。朗読劇ですから当然ですが。でも、稽古を2日もやったので、本を見ない方が早いんじゃないかなと疑問に思っていました。舞台の上で朗読劇とは何ぞや、なんて考えながらやっていました(笑)。
萩原 東出さん、台本を覚えるの早いし、真面目だからね。詩の部分はどういう風に読んだらいいのか、何種類かあるんじゃないかって聞いてきたことがあったね。
東出 朔太郎を演じ切るというよりも、東出が半分、朔太郎が半分みたいな感じでした。詩を朗読するところは自分の解釈で情感たっぷりにやりすぎると、逆に想像の余地がなくなっちゃうと思い、あえて棒読みでやらせていただきました。
難しい棒読みをしてもらう
萩原 役者さんがやるときはどうしても自分を出してオーバーにやりたいじゃない? 棒読みって案外難しいんだよね。それを自分の解釈で辞めて、棒読みに近い状態で僕はやりますって言ってくれた。
でも、果たしてあれで果たしてよかったのかとも思ったんですよ。役者さんは本当は自由にやりたいのよ。本と自分の演技とで悩んでいたのがよく分かった。自由にやってもらった方がいいのかなと。まあ、反省はしませんけどね(笑)。
ところで、役者さんはみなそうだと思うんだけど、演じる時には下調べするの?
東出 調べました。もともと朔太郎の詩集は読んでいましたけど、朔太郎役をやるとなったら、あらためて詩を読むだけでなく、それ以外のところ、マンドリンをやっていたこととか。いろいろ勉強しました。
「詩とは声に出して読む」とか、「自分が作る自由詩には音楽がある」といった言葉だったり。朔太郎がどういう心を持って、詩作にあたったのか、できるだけ調べて臨みました。
はぎわら・さくみ
1946年、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら演出や映像制作も始め、版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。2016年4月から前橋文学館館長の就任。多摩美術大学名誉教授。金沢美術工芸大客員教授。アーツ前橋アドバイザー。
ひがしで・まさひろ
1988年、埼玉県生まれ。高校時代にモデルとしてデビュー、パリ・コレクションにも出演する。2012年に映画『桐島、部活辞めるってよ』で俳優に転身。NHK連続テレビ小説の好演技で人気がブレイク、映画、舞台と幅広く活躍する。狩猟免許を持ち、みなかみ町などで狩猟をする。
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