白井屋ホテル美食の饗宴 ▶︎
地産地消を超えた上州キュイジーヌ

フロリレージュ:川手寛康シェフ/ザ・レストラン:片山ひろシェフ

師弟で繰りなす「美食の饗宴」

 

東京・外苑前にあるフランス料理の名店「フロリレージュ」、川手寛康シェフと白井屋ホテル「ザ・レストラン」、片山ひろシェフによる「美食の饗宴」が8月31日、白井屋ホテルで開かれた。前橋市を中心にした群馬県産の選りすぐりの食材を使い、独創的なコースに仕立てた2人のシェフ。饗宴の舞台裏と今後の展望を聞いた。

-美食の饗宴は開業前の昨年12月以来ですね。
片山 「フロリレージュatシロイヤ」をテーマにしました。川手シェフが白井屋にやってくる。外苑前の伝説のレストランの料理を前橋で食べられますというご案内です。
 料理でお出しする食材の生産者をよく知っていただこうと企画しました。
川手 片山シェフと一緒にやるのは海外のシェフや国内の料理人とのコラボとは違う。彼の料理をずっと見てきたし、癖もよく分かる。彼も僕のことをよく知っている。熟成された部分を表現できる、より挑戦的なコラボができると確信していました。
 -ゲストの反応はいかがだったでしょう。
片山 すごく喜んでいただけました。半分以上、地元の常連さまで、お顔を拝見しましたが楽しんでいただけたよう。私もすごくうれしかったですね。
 -メニューはどちらが決めたのですか。
川手 2人で話し合って。本日までに3回、試作も重ねました。食材ありきですね。こんないいのがあるから、あれを作ってみようとか。
 -食材集めは片山シェフの担当?
片山 はい、普段近くにいますから。地元のいいもの、旬のものを集めました。ほぼ前橋、群馬です。それに手間暇かけ、仕事をすることで、ただの地産地消とは違う深みのある料理になります。
川手 やっぱり食材がよくても、限界を越えられず、みんなが知っているものになってしまう恐れもある。深い意味で食材を理解していないと、その先の扉は開けません。だからこそ、チャレンジして、まあ失敗も多いですけどね。
 -片山シェフは生産者と日ごろからコミュニケーションを取っていますね。
片山 電話一本、メール一本で食材が届く便利性はありますが、本当にいい食材は現地に行って、生産者と話さないと分からないし、手に入りません。例えば本日のチーズは粕川の「スリーブラウン」さんですが、非常に数が少なく入手困難なんです。
川手 片山シェフが買い占めている可能性がありますね(笑)。「いいチーズない?」と聞いたら「面白いのがあるんですよ」って得意そうでしたから。
片山 川手さんは「全部うちに送って。買い取るから」って言ってたじゃないですか(笑)。
 でも、生産者と密にかかわることで、東京ではできないことができる。前橋の店の優位性になります。
 -久しぶりに同じ厨房に立ちました。師匠から見て、弟子は成長しましたか。
川手 だいぶ変わりました。うちに修業に来た当初の料理では通用しなかった。お客さまを喜ばすのは無理でした。いまは6皿持ってくれば、2皿は「いい料理作るじゃないか」と合格点を与えられます。もっと、もっとチャレンジできるようなアドバイスを送りたいですね。
 ―片山シェフは緊張しました?
川手 していないよね。
片山 しましたよ。もう川手シェフが厨房にいらっしゃった瞬間、空気が変わりましたから。スピード感とエネルギーの違いを感じました。僕が感じるのだから、スタッフはもっと感じたはず。いい刺激になりました。


大きく変わるフランス料理

―本日の美食の饗宴で一番勉強になったのは何ですか。
片山 いつも自分が見ている食材なのに、川手シェフのロジック、持って行き方で、かなり美味しく、美しく変わりました。表現の幅の広さ、深みが一皿一皿違うなと改めて感じさせられました。
 例えば、アミューズでお出ししたブータンノワールは豚の血で作る腸詰めですが、スッポンの血でおやりになった。そういう発想に驚かされます。
川手 フランス料理は血を使う文化なんですね。一つぐらいあってもいいけど、豚でやるんじゃ、面白くない。スッポンの血は以前、日本酒で割って飲みましたけど、いまは捨てている。価値のないものに価値を与えるのが料理人の最大の任務ですから代用しました。その食材だから生まれる料理があるのです。
片山 クロックムッシュも別物でした。既存の料理をより洗練させ、より熟成させています。カビを取ってそのカビを発酵させて使う。フレンス料理の歴史を受け継ぎつつ、もっと先を表現している。
川手 フランス料理が大きく変わってきているんです。味の凝縮感がなくなっている。例えば、クロックムッシュもホワイトソースをいっぱいかけてしまえば美味しくなるけど、いまはそれを良しとしない風潮がある。深さでなく、複雑さを作っていくんです。だから、まったく新しい料理が生まれます。
 ―最後に、川手シェフから愛弟子にエールを送ってください。
川手 自由にやってほしい。人の目を気にして作っていたんですね、僕も。だれがどう評価するかと。究極論は自分が作りたいものを作って、喜んでもらえるお客さまに囲まれるのが料理人の最大の喜びでしょう。媚びるのではなく、好きなように作って、お客さまに賞賛されるレストランにしてほしいですね。


ミシュランで2ツ星獲得
川手 寛康

(かわて・ひろやす)


洋食のシェフだった父親の影響で料理の世界に入る。都内の名店で腕を磨いた後、フランスに渡り、星付きの店で修業。帰国後、「カンテサンス」のスーシェフを経て、2009年、「フロリレージュ」を開店する。2018年、アジアベストレストランで第3位。ミシュランガイドで2ツ星を獲得する。

オーナーシェフから白井屋へ
片山 ひろ

(かたやま・ひろ)


帝国ホテルでフランス料理の修業を始める。都内のレストランで学んだ後、帰郷し県内でフレンチ店を開く。白井屋ホテルプロジェクトに参画するため、店を閉め、「フロリレージュ」など国内外の名店で2年以上にわたり研鑽を積む。2020年12月、白井屋ホテルの開業に伴い、「ザ・レストラン」のシェフに。

SHIROIYA HOTEL

the RESTAURANT

〒371-0023
群馬県前橋市本町2-2-15
TEL 027-231-4618
https://www.shiroiya.com/

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