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火事に負けず再チャレンジ
古着店経営の23歳、高橋さん

2024.11.03

火事に負けず再チャレンジ
古着店経営の23歳、高橋さん

 前橋市中心街の最北部、弁天通りに2022年12月、風変わりな古着店が誕生した。開店当時、経営者は大学生。今年3月に大学を卒業、本腰を入れて商売に向かおうとしていたとき、悲劇が襲った。店舗が全焼、宝物のような数百着の服もすべて焼えてしまった。失意のどん底に突き落とされた23歳。いつか再びこの通りで店を出すことを夢見て動き出した。

未明の火事、店舗を全焼

 「火事です」。群馬県警から電話があったのは9月27日早朝。高橋颯(かざむ)さんはリフレッシュを兼ねて働いていた長野県の牧場の寮にいた。すぐに前橋に戻ると、木造2階建ての店舗は黒焦げ。「嘘だろ」。ただ、呆然と立ち尽くすしかなかった。

 7月から休業、充電して10月から本格稼働するつもりだった。火事の原因は漏電とみられる。店は取り壊すしかなく、閉店を余儀なくされた。

全焼した店舗で現場検証が行われた

▲店内にあった服はすべて燃えてしまった

服と思い出を引き継ぐ

 「服屋XIAO(シャオ)そなちね」は「眠っている大事な服を思い出とともに引き継ぐ」をコンセプトにしている。

 普通の古着店のように買い付けはしない。自分や家族のいまは着ることがなくなったけど捨てられない思いの詰まった服を引き取り、丁寧に手入れをして新しい持ち主に渡す。服を預かる際に聞いた思い出や着こなしを伝えながら。

 

▲営業していた時の店舗。レトロな佇まいだった

▲洋服以外に小物や雑貨も扱った

 「周りの大学生のように漠然と就職するのではなく、自由に好きなことをして働きたかった」と起業家の道を選んだ高橋さんは高崎生まれの高崎育ち。大学も高崎市内だったが、出店場所を探していた際、弁天通りを見て「ディープな感じがすっごく気に入った」と一目ぼれ。しばらく空き家だった金物店を友人たちの力を借りながら改装して自分の城に仕上げた。

 古着好きや居心地のよい雰囲気を求める若者が自然と集まり、老舗の多い弁天通りに一筋の活気が宿った。火事はそんな矢先の出来事だった。

ワゴン車購入の費用募集

 落ち込みはしたが、立ち直りも早かった。服は在庫があるものの先立つ資金がない。焼け焦げた店の前に募金箱を置き、浄財を募った。「ブックフェスの2日間は結構集まった。助かりました」と見ず知らぬ人の善意に感謝する。

▲募金箱に時折、浄財が置かれる

 現在は農家でバイトをして生計を立てている。店舗営業は当分できないため、イベントや人が集まる場所に出店する。第一弾として、伊香保温泉にあるキャンドルやアクセサリーのショップ「ヒトゴト」で12月7、8日、そなちね2周年マーケットを計画している。

いま一番欲しいのはワゴンタイプの自動車。「車に服を積んで、いろいろな場所に行きたい」とキッチンカーの古着店版を構想、資金や車両の提供を呼び掛けている。

▲2周年記念マーケットへの来場を呼び掛ける

 そして、その先に目据えているのが弁天通りでの店舗の復活。「この通りが大好き。いつか戻ってくることができればうれしい」と優しい視線を送る。

 支援の申し出は高橋さん(☏090-6512-1911)へ。