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【現地ルポ】JINS、アボットキニーへ
「米国で最もクールな通り」で挑む

2026.05.31

【現地ルポ】JINS、アボットキニーへ
「米国で最もクールな通り」で挑む

 米誌GQが「米国で最もクールな通り」と評したロサンゼルス・ベニス地区のアボットキニー通り。日本でいえば代官山のように感度の高い個店が並び、大家が店子を選ぶとされる特別な場所だ。その一角に、前橋発祥のアイウエアブランド「JINS」が2025年1月、新店舗を開いた。現地を歩き、同社グループのUS法人、JINS Eyewear US, Inc.の久保田勝美さんに話を聞いた。
(取材・撮影/阿部奈穂子)

空が大きい1㌔

 アボットキニー通りは約1㌔。ヤシの木が並び、高いビルはない。空が広い。青が強い。ロサンゼルスの乾いた光が、低い建物の外壁やショーウインドーをくっきり浮かび上がらせる。
 通りに多いのはアパレル、アイウエア、ライフスタイル系の個性的な店だ。どこにでもある大型チェーンや威圧感のあるハイブランドの店は見当たらない。古い建物の壁や窓、素材感を生かしてリノベーションし、それぞれの店が自分たちの表情をつくっている。

▲両端にヤシの木が続くアボットキニー通り

 歩いていると、JINSホールディングスCEOの田中仁さんがいつも語る言葉を思い出した。
 「前橋は空が青い。空が大きい。それがいい」
 前橋の空と、アボットキニーの空がつながった。

大家が店子を選ぶ

 久保田さんによると、アボットキニー通りでは数人の大家が店子を選ぶ。誰でも入れるわけではない。家賃を払えるかどうかだけで店が決まるのではなく、その店が通りの個性に合うか、街の価値を損なわないかが見られるという。
 「儲かる店なら何でもいい、という場所ではありません。通りの雰囲気を大切にしている。だから出店できること自体に意味があります」と久保田さんは話す。

▲JINS Eyewear US, Inc.の久保田さん

 JINSはこれまでロサンゼルス周辺に3店舗を展開してきた。ただ、いずれも郊外型のモールが中心だった。久保田さんは「東京で言えば船橋や大宮のようなベッドタウンに近い場所でした。今回はロサンゼルスの中心的な通りへの本格的な進出です」と位置づける。
 白井屋ホテルの再生をはじめ、前橋のまちづくりをリードしてきた実績、ユニークな眼鏡づくり、ブランドとしての姿勢。そうした積み重ねが評価され、入居が実現したという。日本企業では、化粧品のアルビオンとJINSがこの通りに店を構えている。

▲通りの中央に位置するJINS

眼鏡店ひしめく激戦区

 通りには約10店の眼鏡店がある。RAY-BANをはじめ、ニューヨーク発のアイウエアブランド「WARBY PARKER」、JINSの隣にはニューオーリンズ発の個性派ブランド「KREWE」がある。先進的なデザインと高品質な素材を打ち出す店が並ぶ、まさに激戦区だ。
 その中で、JINSの店内には客が絶えない。白レンガと木什器を生かした空間に、眼鏡やサングラスが豊富に並ぶ。常時300種。日本と同じ商品がここで手に入る。

▲大きな窓からアボットキニー通りの光が差し込む店内

古い建物に前橋の記憶

 店舗は、既存の建物をリノベーションしてつくられた。改修のために壁をはがしていくと、レンガが現れたという。設計は建築家の髙濱史子さんと小松智彦さん。高い天井、白いレンガ壁、大きなアーチ窓を生かし、木の什器や左官仕上げ、研ぎ出し仕上げなど、日本の素材感を重ねた。

▲高い天井とレンガの壁を生かした店内

 中央のディスプレイ什器には、JINS創業の地である前橋にゆかりのある赤レンガを使った。現地にもともとあったレンガの質感に、前橋の素材を響かせる。髙濱さんは、前橋・中央通りの「つじ半」のレンガ建物も手がけている。

▲前橋にゆかりのあるレンガを使ったディスプレイ什器

画期的な会計後30分お渡し

 商品には二次元コードが付けられている。客は自分のスマートフォンで読み取り、オンライン上で受付を済ませる。スタッフと相談してレンズを選び、会計、フィッティング、調整を終えると、商品は自宅配送か店内の「PICK UP LOCKER」で受け取れる。
 アメリカでは、眼鏡の受け取りまで時間がかかることが多い。JINSが掲げる「会計後30分お渡し」は、現地では画期的な体験となる。商品を選ぶ、レンズを決める、受け取る。その流れまで含めて、JINSはアボットキニーで自分たちの強みを示している。

▲受付から受け取りまでを効率化する新しい仕組み

 アボットキニー店は単なる海外新店ではない。選ばれた街に、選ばれて入った店だ。前橋の空を見てきたJINSが、ロサンゼルスの大きな空の下で、次の扉を開けている。

▲JINSのレンガ造りの建物。ヤシの木が並ぶ通りの景色と重なる

「JINS」の歩み

1988年 前橋市で有限会社ジェイアイエヌを設立。
2001年 アイウエア事業「JINS」を開始。福岡天神に1号店を開く。
2010年 中国・瀋陽市に海外1号店を開く。
2013年 東京証券取引所第一部に上場。
2015年 米国・サンフランシスコに北米1号店「JINS Union Square店」を開く。台湾にも進出。
2018年 フィリピン、香港に進出。
2018年9月 ロサンゼルス地域初の店舗として、トーランスのDel Amo Fashion Centerに出店。
2025年1月 ロサンゼルス・アボットキニー通りに「JINS Abbot Kinney店」を開く。
2025年8月 モンゴル・ウランバートルに同国1号店を開く。
2025年11月 ベトナムに3店舗同月オープン
2026年4月 世界で約860店舗を展開。