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300年の「藤原盆」よみがえる
白井屋ホテルで披露
2026.03.31
みなかみ町藤原地区で江戸時代から300年以上受け継がれながら、約10年前に途絶えた木製の刳(く)り盆「藤原盆」が現代の器としてよみがえった。沼田市の吉澤指物店3代目、吉澤良一さんをリーダーに、白井屋ホテルエグゼクティブシェフの片山ひろさんら8人がチームを組み、8カ月かけて6種類を開発した。名称は「シン・フジワラボン」。3月30日、白井屋ホテル ザ・レストランでお披露目の食事会が開かれた。
(取材/阿部奈穂子)
途切れた歴史をつなぎ直す
藤原盆は利根沼田の栗や栃など地元の木を使い、木工旋盤や手斧で粗削りした後、のみや小さなかんなで彫り上げ、地場の漆を塗って仕上げる。手間も時間も惜しまない伝統工芸だ。藤原地区の冬の農閑期につくられてきたが、最後の職人が引退し、その歴史はいったん途切れた。
▲吉澤さんが保管していた100年ものの藤原盆
復活のきっかけは、吉澤さんの「藤原盆を蘇らせたい」という強い思いだった。初めてその名を聞いたのは25歳のとき。勉強のために鎌倉彫を見に行った際、「群馬には藤原盆というすごい工芸がある」と逆に教えられたという。「当時は古臭くて、いいとは思わなかった」と振り返る。
だが、年齢を重ねるにつれ、木肌のぬくもりや土地の暮らしの中で受け継がれてきた重みを感じるようになった。「自分でつくってみたい」と試作にも挑んだ。
▲藤原盆の大鉢を手にする吉澤さん
転機になったのは、群馬県主催の令和7年度「ぐんま地場産商品開発プロジェクト」だった。採択を受け、吉澤さんは商品化に向けたチームづくりに動いた。欠かせないと考えたのは料理人の視点。すぐに長年親交のあった片山シェフに声をかけた。
さらに共愛学園前橋国際大3年の宮田愛菜さん、岡田咲希さん、食空間コーディネーターの荒井よう子さんらも開発に加わった。学生の率直な感覚や食空間の視点も取り入れた。開発アドバイザーとして塚越屋七兵衛女将、塚越左知子さんも参加した。
▲シン・フジワラボンにひと口の前菜を乗せて
「技術を使って新しいものをつくるだけで終わらず、飲食店やホテル、旅館、一般の人にも気軽に使ってもらいたい。現代の暮らしに合わせたものにしたい」
使い手の感覚を取り込みながら形にしていった。
白井屋ホテルの新たな器に
完成した「シン・フジワラボン」は6種類。それぞれに用途と表情がある。片山シェフの発想が強く反映されたのは、高台皿「uffe 卵(うっふたまご)」、こね鉢をそのまま縮めたような「フジワラ・ボウル」、そして「JO-GO 浄-合(ジョーゴ)」だ。
「JO-GO 浄-合」は小さな鉢をワイングラスにかぶせるように置き、ハーブやスパイスを入れると、底の穴から液体がぽたりと落ちる仕組み。片山シェフは「ゲストの目の前でオリジナルドリンクを完成させる新たな道具です」と説明する。
▲ノンアルコールカクテルの世界も広げる「JO-GO 浄-合」
お披露目の食事会では、シン・フジワラボンを使った料理が供された。「普段と違うテイストの器、それも郷土を感じてもらえる器を使う。料理もフレンチだけでなく、郷土を感じてもらえるメニューを用意しました」と片山シェフ。
▲「この器をザ・レストランで使っていきます」と片山シェフ
白井屋ホテルは今後もこれらの器をコースの一部で使っていくという。
みなかみの深山で300年間、受け継がれてきた藤原盆は、300年の歴史を持つ白井旅館を原点とする白井屋ホテルで、新たな一歩を踏み出した。
▲使いこむほどに味が出る藤原盆。シン・フジワラボンも同じ
販売、問合せ
吉澤指物店
- お問合せはこちら
- 090-3436-8607
| 住所 | 沼田市戸神町848-1 |
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