watch
見たい
都会が狭くなりすぎた──
糸井重里さんが
赤城に「駅」を作る理由
2025.10.28
11月1日にαオープンする「ほぼの駅AKAGI」。場所は、かつて赤城山鋼索鉄道の「赤城山頂駅」があった旧駅舎。プロジェクトへの思いを「ほぼ日」代表、糸井重里さんがホームページの動画で語った。出発点は赤城の絶景でも観光でもない。「都会が狭くなりすぎてる」という違和感だった。
(文/阿部奈穂子)
みんな、我慢しすぎてる
糸井さんがまず口にしたのは、都市そのものの行き詰まりだ。「お店ができてはどんどんいなくなるんですよ。理由は家賃が高すぎるから。せっかく改装して、綺麗に作った店が『あっ、もうない』」
その一方で密集の極も問題だと語る。「歌舞伎町みたいに雑居ビルの中にもワーッとあって…土地の感覚が異常になってると思うんですよ」
都会は塔のピークとなり、地方は人が来ず痩せていく。「今の異常さをみんながずっと我慢してるってことはあり得ないなと思ったんで」。ほぼ日は、土地の使い方を自ら試すことを選んだ。
▲ほぼの駅AKAGIの内装
「ハラッパを手に入れました」から赤城へ
最初のアプローチは大胆かつ素朴だ。「ほぼ日はハラッパを手に入れましたっていうコンセプトで…誰も買わないよみたいな場所を買おうかということになって」
検討の末に辿り着いたのが赤城山だった。「そこのところを僕らの足がかりにして…エクササイズができるじゃないですか」。都市と地方の“温度差”に橋をかける実験を始めた。
▲都市の息苦しさから、飛び出せる眺望テラス
企画より先に「箱」をつくる
本来は企画ありきだが、今回は逆だ。「僕らにとってみると初めてのケース」と言いつつ、用途を限定せず、“居られること”を優先した。
「雨露しのげて、暑さ寒さもしのげて…何にも目的ないけどあそこ行って、しばらくちょっと居ようかなとか」
目的ではなく滞在そのものに価値を置く場所だ。
▲ここから、“土地との新しい距離感”が始まる
赤城だからできる挑戦
糸井さんは前橋生まれ。徹夜で大沼に登った記憶も、埋蔵金企画で通った日々もある。
「東京からどのくらいの距離感かっていうのをつかみやすかった。東京から高速で近くまで行けて、高速から普通に舗装されてる道を行ける」と糸井さん。
「とりあえず拠点を小さく作って、そこから赤城と東京を往復する。ベースキャンプも作りやすいなと思った」と話す。
食にも力を入れる。「『あそこに行かないとないよ』っていう美味しいもの。日本一じゃないですかっていうものも準備中です」
観光施設の軽食では終わらない。“行きたくなる理由”を、食が担う。
11月からはαオープン。プレオープンという言葉は使わない。
「本番は全然変わるかもしんない」という余白を残したまま動き出す。
▲鳥居峠に建つ
そして“駅”という名前にも意味があるという。
「(ケーブルカーの)終点の駅だったんだけど、希望への出発の駅みたいなそういう意味を込めて駅っていう名前を残しました。本当に行きたい場所に自由に行けるぞっていう」
「ほぼの駅」の正式オープンは来年4月。
山頂の建物は小さい。だがここで問うのは、土地との付き合い方そのものだ。
赤城から始まるこの実験は「あなたはどこに立って生きる?」と問いかけている。
※サムネ画像:ほぼ日HPより
▲終点だった駅。いまは希望への出発点
糸井さんの動画はコチラから


