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藤井編集長が選ぶ【みやま文庫この一冊▶5】
近藤義雄監修『群馬の歴史と文化-上州文化の源流をたずねて』(165巻)

2026.06.01

藤井編集長が選ぶ【みやま文庫この一冊▶5】 
近藤義雄監修『群馬の歴史と文化-上州文化の源流をたずねて』(165巻)

 60年以上にわたって群馬の歴史や文化を伝える図書を出版してきた「みやま文庫」には、郷土の英知を結集した「名著」がそろっています。これまでの刊行数は255巻。1冊1冊が貴重な文化遺産であり、群馬の宝です。その魅力を少しずつ、気ままに紹介していきます。(みやま文庫編集長/藤井浩)

近藤義雄監修『群馬の歴史と文化-上州文化の源流をたずねて』(165巻)
平成13(2001)年10月刊

頼りになる「座右の書」

▼みやま文庫のなかで「座右の書」は何かと問われれば、今はこの本を挙げたい。少し前から続けている調べ事で、いちばん頼りにしている資料の一つである。
▼みやま文庫の40周年を記念して、節目にふさわしい内容を目指して2001年に編集・発行した。388㌻と通常巻の2倍近くのボリュームを持つ。群馬ならではの文化の源流をテーマにまとめた郷土史の入門書だ。
▼「群馬のあゆみ」(近藤義雄)「古墳文化」(松島栄治)「養蚕・織物・製糸の文化」(井上定幸、中島明、宮崎俊弥)「短詩型文学」(野口武久、井田金次郎、中里麦外)の4章構成。執筆者が独自の視点で掘り下げている。

 

『群馬の歴史と文化-上州文化の源流をたずねて』

古墳、絹文化、詩的風土の結びつき示す

▼手元に置きたい最大の理由は、本書が文化の「源流」をたどりながら、これまで別々に語られがちだった群馬の古墳文化、絹文化、詩的風土―とりわけ萩原朔太郎の詩業―の深い連関を明確に示し、そのかけがえのなさを再認識させてくれる点にある。
 一例としてこんな記述がある。

〈蚕種の輸出を通して島村の人々は早くから欧米の思想や文化にふれ、国際的な視野をもっていた。自由民権思想とキリスト教がその典型である〉(「養蚕・織物・製糸の文化」)

〈新しい時代の波の彼方に見えかくれする、西洋の文化文明への憧れは、敏感な詩人たち(大手拓次、山村暮鳥、萩原朔太郎、高橋元吉、萩原恭次郎)にとって想像を絶するものであった。(略)若き日に得た思考によって、上州人特有の反骨精神と、たえず新しいものを求め続ける革新性とが育てられていったのである〉(「短詩型文学」)
▼本書は、上州文化を総合的に知るための「地図帳」でもある。テーマを定め、地域の歴史・文化研究に踏み込もうとしている人にとっては、絶好のガイド役になるのではないか。
 個々の文化や歴史が細分化され、地域の全体像が見えにくくなっている今、「源流」から群馬文化を総合的に捉え直す視点は一層、重要になっているように思う。

机上に備えている頼もしい「相棒」たち