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臨江閣別館の廊下焦がす
ドラマ撮影中、照明機材が発熱

2025.04.24

臨江閣別館の廊下焦がす
ドラマ撮影中、照明機材が発熱

 国重要文化財の臨江閣(前橋市大手町)で4月23日、ドラマ撮影中に照明機材の発熱により建物の一部を焦がす事故が起きた。前橋市は群馬県、文化庁に事故を報告、両者と協議し棄損カ所の修理にあたる。

撮影会社に過失か

 事故が発生したのは別館2階の廊下。床板を円形に直径約12㌢焦がした。焦げた床板は別館が建築された1910(明治43)年当時のものとみられる。

 前橋市文化財保護課によると、4月23日 8 時ごろ、撮影会社が持参した撮影機材の準備中、床面に置いていた照明機材のうち1基の電源が入っており、建物外部に設置していた発電機を稼働した際に照明機材が発熱し、床板を焦がした。床面の養生材が溶けて発生した煙を自動火災報知設備が感知、撮影会社のスタッフが電源を切った。電源は本来切っておくはずだった。撮影には指定管理者が立ち会っていた。

 撮影はインターネットテレビ「ABEMA (アベマ)」がこれから放映するドラマのために行っていた。撮影は一度中止となっている。

 ABEMA を運営するAbemaTV(東京都渋谷区)は自社のホームページで「このたびは貴重な文化財を破損したことを深くお詫びいたします。今後、修繕に向けて真摯に取り組むとともに、再発防止に関しましては関係機関の指導に適切に従い、文化財の保護を徹底してまいります。」とのコメントを掲載した。

▲き損状況

ドラマ、映画のロケに人気

 臨江閣は明治期の貴重な建築物であることから、ドラマや映画の撮影に利用されている。楫取素彦が主人公の夫として登場する、2014年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』でも使われた。

 夜間はライトアップされ、”光が映し出す100年前の流行色”をコンセプトに、当時流行した緑がかった青の新橋色や茄子紺色を使用し、製糸産業が発展した「糸のまち」前橋を表現している。

 将棋の竜王戦でも使われたほか、市民の茶席、落語寄席、音楽会などに使われている。結婚式の写真撮影の前撮りにも人気が高い。

 市によると、通常のイベントはこれからも受け入れ、ドラマや映画の撮影など大規模なものについては、事故防止の徹底を図り慎重に判断するとしている。

明治期の迎賓館

 臨江閣は近代和風の木造建築。本館、別館、茶室があり、いずれも国の重要文化財に指定されている。本館は1884(明治17)年9月、当時の群馬県令・楫取素彦の提言を受け、土地を後に初代前橋市長となる下村善太郎が提供し市内の有志の協力と募金により迎賓館として建てられた。1893(明治26)年には明治天皇が宿泊している。

 茶室はわびに徹した草庵茶室で、同年11月、京都の宮大工、今井源兵衛によって造られた。

 別館は1910(明治43)年、群馬県が主催した一府十四県連合共進会の貴賓館として建てられた書院風建築。木造2階建てで入母屋造り。2階には180畳の大広間がある。