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「BAJA1000」3年目の勝負-4-
【能戸知徳ドライバーに直撃】
2024.11.13
12歳の時からの夢だった「BAJA(バハ)1000」。2022年、22年かけて実現させた。2023年と合わせて過去2回は不完全燃焼に終わった。3年目の今年、目指すはクラス優勝、そして…。TEAM JAOS(チーム・ジャオス)の能戸知徳ドライバーに直撃インタビューした。
目指すはずばりクラス優勝
―3年目の勝負、目標を聞かせてください。
ずばり、クラス優勝です。「まず完走を」といったイメージがチーム内では強いですけど、上を目指さないとチームとして進歩がない。出場するのはストックフル(市販車無改造)というクラス。可能性は十分あります。
その上で、狙っていることがありです。
―優勝以外で? 何でしょう。
「アイアンマン」です。アイアンマンとはソロドライブで全行程を走破します。複数のドライバーが交代しながらマシンをゴールまで進めるのが一般的で、前回はそうしたのですが、今回は1人で最初から最後まで走り切りたい。
前回は1300㍄(2090㌔)とBAJA1000としては過去最長でしたが、今回は869㍄(1390㌔)と短いコース設定です。制限時間は36時間。時速35㍄(56㌔)で走れば約25時間でゴールできる計算になる。もちろん、給油やナビゲーター交代、トラブルなどでピットストップしなければならない場面もありますが、不可能なことではありません。
―なぜ、1人で? ドライバーを交代しながらの方が速く、確実にゴールできるでしょう。
フレッシュなドライバーを投入した方が有利ですからね。ただ、チーム・ジャオスは私しかドライバーがいない。交代するとすれば、現地のサポートチームのドライバーになるわけです。
車両製作の準備段階からレース中のドライビング、メンテナンスとチーム・ジャオスで成し遂げたいのがアイアンマンを狙う理由です。当然、レース中にドライバーの交代が必要と赤星(大二郎)監督が判断すれば従います。チームの目標が第一ですから。
12歳で見た夢をかなえる
―過去のレースを振り返りましょう。1年目はマシントラブルのため100㍄でリタイアとなりました。
国内で実施した3回のテストや現地でのテストでも一切トラブルはなく、チームの誰もが予測できなかった。ただ、私はこれが運命なのかと、意外と悔しさはなく、結果を素直に受け入れられました。
夢だったバハのスタート台に立てたということで満足したのかもしれません。
―2年目は制限時間オーバーとなりましたが、ゴールまで全行程走破しました。チームのみんなが喜んでいました。
ただ、私自身はすごく悔しかったですね。制限時間が50時間で、わずかに40分オーバーしただけ。現地スタッフとの間でのコミュニケーションの問題とか、ちょっとしたことを改善できれば完走できたと思います。「タラレバ」を言っても仕方ありませんが、小さな積み重ねで完走を逃してしまったことを後悔しています。
―バハを夢見たのは随分前と聞きました。
2000年に開かれた「バハ2000」にメカニックとして参加した父に連れて行ってもらい、観客としてレースを観戦しました。12歳の時でした。その前からクローズドコースなどでバギーに乗ってオフロードレースに出場していました。
12歳の少年にはV8エンジンの唸り、大地を揺るがす振動、何万人もの観客の大声援、排煙の匂いまでたまりませんでした。ドライバーはヒーローで、自分もいつか、あの場所に立ってみたいと思うようになりました。
―ジャオスの本社・工場のある地元の榛東中学校で最近、講演されましたね。
「夢を諦めない」をテーマに講演会の機会をいただきました。2000年に見た夢を22年後にかなえたことを。ジャオスに入社したのが2015年。チーム・ジャオスを結成して、アジアを舞台に参戦しました。2019年に優勝することができ、次は世界へということになった。コロナ禍でもバハは開催していたので、これを目指すことになったのです。
バハに出たい、出るのが夢だということはずっと周りの人に話していました。夢は言葉にすればかなう。「みなさんも夢や目標を友達とか、家族とか、周りの人に発信しようね」という話をしました。
―チーム・ジャオスは4WD向けパーツメーカーであるジャオスの社員を中心としたプライベートチーム。自動車メーカーのワークスとは違いますね。
小さいからこそ小回りが利いて、自分の考えも反映させられる利点があります。
メカニックには群馬トヨタグループさんの方も加わります。国内でテストのために1週間にわたって合宿を行い、寝食を共にしました。メンバーの性格も分かるようになり、チームワークもよくなってきました。
―バハに向けての最終スケジュールを教えてください。
11月11日に日本を発ち、時差があるので現地時間の11日にロサンゼルスに到着し、出発地となるメキシコのエンセナダに入ります。翌日から現地でテストランをして、13日もしくは14日に車検を受け、15日に出走を迎えます。
羽田空港では最後にカツ定食を食べます。カツは大好きで、ゲン担ぎの意味も込めて。応援していただいているみなさんにいい報告ができるよう頑張ります。
能戸知徳(のと・とものり)1988年、北海道北見市生まれ。10歳からオフロードレースに出場、国内外のラリーで活躍する。2015年にジャオスに入社、TEAM JAOSのドライバーを務める傍ら、開発部に所属し商品開発にあたる。TOYO TIREのオフロード向けブランドOPEN COUNTRYのブランドアンバサダーも務める。前橋市在住。