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「自分を驚かせる詩」を書く
朔太郎賞・杉本さんの企画展

2024.06.08

「自分を驚かせる詩」を書く
朔太郎賞・杉本さんの企画展

第31回萩原朔太郎賞を受賞した詩人、杉本真維子さんの企画展「わたしは、にんげん、といいます 仲良くできますか」が6月8日、前橋文学館で始まった。初日は杉本さんがギャラリートークを行い、「こういうものを書こうとは考えない。自分のコントロールの外に出し、予定調和ではない、自分を驚かせる詩ができたとき、自分を超えられる」と詩作について語った。

散文が「詩の通路に」

杉本さんは昨年9月、故郷の長野県にあり、ピラミッドやUFO到来といったオカルト的な伝説が残る皆神山を題材にした4作目の詩集「皆神山」で萩原朔太郎賞を受賞した。企画展は毎年、前年の受賞者を取り上げている。

トークで自身の詩に関して、「『あなたの詩が分からない』と言われ続けても、馬の耳らしく言うことを聞かないで書いてきた。『分からないけどおもしろい』と言ってくれる人も多い」と説明。文学館の要請で「皆神山」の中の8編と旧作の1編に散文を付けたことには「詩の説明にはなっていないが、詩の通路になっている」と語り、「私の世界観を共有してくれたらうれしい」と鑑賞を歓迎した。

▲「皆神山」に込めた思いを語る杉本さん

「FUKUSHIMA、イバルナ」という衝撃的な詩については、東日本大震災と近い時期に父親を亡くし、「『まだお若いのに』という言葉に傷つき、数年癒えなかった」状況を「死者は弱くない。この胸の悲しみの強さがそのまま死者の強さ。目線を下げ、死者と自分を同じ高さに置くこと、いばらないことで救われる」と悟った経験から詩を書き、詩集に入れたと語った。

▲萩原朔太郎賞を受賞した「皆神山」(右)

詩の森、朗読と映像、思い出の品

企画展は29歳で詩壇デビューしてから22年間の杉本さんの詩作を辿っている。4つの詩集に杉本さんが書き下ろした初公開の散文を含め、150点の資料を展示している。

担当の学芸員、柳田依子さんが杉本さんの実家に保存されていた段ボール箱から見つけた小学生時代に書いた絵や詩、デビュー前に投稿した詩など、詩人の人間性まで近寄れる貴重な資料もある。

▲小学生時代に書いた家族の絵や読書感想文

展示にも工夫を凝らした。信濃毎日新聞で連載した詩篇と散文「みしらぬ蛇口 詩の森を歩く」のコーナーは15回分が天井から床近くまである布製のバナーに書かれ、詩の森を散策するような気分に浸れる。

▲「詩の森」を歩くような展示

文学館特別館長の萩原朔美さん、玲子さん夫妻が「皆神山」の中の9篇を朗読する映像も観賞できる。霧に埋もれるような神秘的な皆神山で定点観測した映像が流れ、詩の世界に深く入り込むことができる。

▲実際の皆神山を見ながら朗読を聴くことができる

第31回萩原朔太郎賞受賞者「杉本真維子展」

お問合せはこちら
027-235-8011
・会期 6月8日(土)~9月23日(月)
・休館 水曜
・時間 9時~17時
・観覧 500円(高校生以下、障害者手帳持参者と介護者1人は無料)