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『青猫』の世界に包まれて
前橋文学館で刊行100年記念展

2024.01.27

『青猫』の世界に包まれて
前橋文学館で刊行100年記念展

萩原朔太郎の第2詩集『青猫』が刊行され100年を迎えたのを記念した「BLUE MELANCHOLIE-『青猫』が『定本青猫』に辿りつくまで-」が1月27日、前橋文学館で始まった。原稿や詩集が刊行された前後の書簡を展示、詩作に影響を与えた人間関係の苦悩やエピソードを紹介することで、『青猫』が生まれた背景と『定本青猫』を世に出すまでの心情の変化を紐解く企画。妻や愛していた女性との関係を生々しく示す文献もあり、詩人である朔太郎の人間としての苦悩と解脱を感じられる。文学館で『青猫』を全面的に取り上げた企画を開くのは初めて。5月26日まで。

朔太郎が苦しみ、愛した詩集

『青猫』は第1詩集『月に吠える』で口語自由詩を確立し、一躍、時の人となった萩原朔太郎が6年後の1923年1月に刊行した。妻との関係に苦しみ、朔太郎が後年、書簡の中で「私の生活のいちばん陰鬱な梅雨時」と回想した時期に書いた詩集であり、一方で朔太郎が自分の作品で最も好きだった詩集とされる。

▲『青猫』=1923年、新潮社

▲『定本青猫』=版画荘

『定本青猫』は1936年3月、『青猫』以降の詩篇を組み込むとともに、離婚していた妻との結婚後に発表した最終章「艶めける霊魂」をすべて削除するなど、構成を変えて刊行した。

寝転んで詩の朗読聴こう

企画展の会場は『青猫』と『定本青猫』の2つのコーナーで構成している。

『青猫』側は青い糸のインスタレーションを多数飾り、生原稿や原稿のコピーを展示している。私生活にとらわれていた朔太郎を糸の絡みで表現した。

恋心を寄せていたエレナは『月に吠える』が刊行された1917年に亡くなっており、同年から発表した詩を掲載した『青猫』には彼女と思われる印象的な女性の描写が多いことが展示品から理解できる。

▲青いインスタレーションで飾られた『青猫』の会場

▲靴を脱いで寝転んで『青猫』の朗読を聴くことができる

▲前橋文学館入口でも巨大な本に耳を傾けると…

▲フォトスポットもあります

寝転んで朗読を聴けたり、原稿のコピーを手に取れたりと、気軽に朔太郎の世界を楽しめる仕掛けが随所にある。

組木細工と『定本青猫』の共演

『定本青猫』側は群馬県建具組合連合会の協力で、組木細工が展示され、温もりを感じる木の世界が広がる。2つの詩集の黄色い装丁と若い時期は西洋への憧れを強く抱いていた朔太郎が晩年、日本文化に回帰した様子を表現した。

▲見事な組木細工と『定本青猫』のコラボ

定本が作られる経緯については『青猫』の構成や装丁に満足していなかったためとして、展示で詳しく説明している。

別れた妻が雑誌に投稿した朔太郎との結婚生活を振り返った記事や朔太郎が生涯の友である室生犀星に離婚を報告する書簡も展示されている。

『青猫』と同じ年に刊行した第3集『蝶を夢む』を含め3集に掲載された詩の一部で、『青猫』と『定本青猫』に誤植があることを示す展示もある。

企画を担当している学芸員の石塚まりこさんは「私自身、『青猫』は暗く、露骨なエロティシズムがあり、好きな作品ではなかったが、背景を調べると、心にすっと入り込んでくる。定本を作ることで朔太郎がいろいろな思いを昇華させていることが理解できた。ぜひ、『青猫』の世界に包まれてください」と鑑賞を呼び掛けている。

作品朗読会「『青猫』世界~情炎と憂鬱が昇華するとき~」

『青猫』の詩を朗読する作品朗読会が2月17日(土)14時から、前橋文学館で開かれる。出演は文学館の萩原朔美館長、役者の東野善典さん、あかぎ団の礒干彩香さんと加藤さやかさん、KPCほか。

定員は先着80人。無料

「BLUE MELANCHOLIE-『青猫』が『定本青猫』に辿りつくまで-」

・会期 1月27日(土)~5月26日(日)
・時間 9時~17時
・休館 水曜、2月26日(月)~3月5日(火)、3月21日(木)※3月20日(水)は開館
・観覧 一般500円、高校生以下、障害者手帳持参の人と介護者1人は無料