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チャーミングな七福神や縁起物  
飯塚裕子さん 粘土細工で福を呼ぶ 

2023.12.29

チャーミングな七福神や縁起物  
飯塚裕子さん 粘土細工で福を呼ぶ 

「作っていると多幸感が半端ないんです」。前橋市在住の粘土作家、飯塚裕子さんの作る七福神や縁起物が人気を呼んでいる。可愛くて愛嬌のある顔や姿が特徴。高崎市の大聖護国寺から依頼を受けた「釈迦涅槃図」立体版の制作も進んでいる。飯塚さんを粘土の世界と出会わせたのは、今年7月に亡くなった木版画家で絵本作家の野村たかあきさんだった。(取材/阿部奈穂子)

野村さんのピンチヒッターで

大切そうに玉を抱える、つぶらな瞳の龍。客から依頼を受け、超軽量樹脂粘土で来年の干支の置物を作っている。

造形し、アクリル絵の具で色をつけ、体裁を整える。「どれもこれも楽しくて幸せな作業。見るとくすっと笑っちゃうのが私の作品の個性です」と飯塚さん。

 

▲造形を終えた龍。これから色付けに入る

イラストレーターだった飯塚さんが、樹脂粘土を始めたのは20年前。前橋市が主催する「ものづくりの作家展」に参加予定だった野村たかあきさんが急遽、出られなくなり、「代わりに出てよ」と言われたのがきっかけだ。野村さんとは共通の友人を通じて親しくしていた。

「『何を作ればいいんですか』と聞いたら『好きなモノを作ればいいんだよ』と言われ、思いついたのが、大学の卒業制作で取り組んだ粘土細工でした」。10数年ぶりに触れる粘土。福を呼ぶものを、との思いで七福神の大きな人形を作った。

その後、数年間は粘土作品を作り続けたが、評判は今ひとつ。いつの間にか制作を辞めてしまった。

▲野村さんの工房「でくの房」の前で

再開したのはコロナで、本業のイラストの仕事がストップしたため。

「あり余る時間を何に使おうかと考えたときに、やっぱり粘土だと思ったんです。以前とは違い、制作の楽しさを心から味わいながら、宝船に乗った七福神を作りました」。2020年10月、前橋市芸術文化レンガ蔵で行われた「ぐんまものづくりの集い」に出品したところ、「ぜひ売ってほしい。会社に飾りたい」。足利市の土木会社の社長さんから依頼がきた。

「ワクワクしながら作ったものは、見る人にも伝わるんだ」と学んだ。

▲2020年、コロナ禍で作った七福神

大聖護国寺「釈迦涅槃図」を5年がかりで

葛飾北斎の絵「宝船の七福神」をモチーフにした作品を作ったときは、四六時中、北斎のことばかり考えていた。

「野村さんのところへ行き、『北斎が降りてきたんです』と言ったら、『俺は円空さんが降りてくる。製作に息詰まると円空さん、どうしたらいいんだよーって尋ねるんだよ』なんておっしゃっていました」と笑う。

▲北斎の「宝船の七福神」(写真左)をモチーフにした飯塚さんの作品

▲格子の中に縁起物を詰め込んだ作品

いま、取り組んでいるのは高崎市の大聖護国寺の「釈迦涅槃図」をモチーフにした作品。2021年末に同寺の住職から依頼を受け、5年がかりで仕上げる壮大な計画になっている。

「釈迦を取り巻くようにお弟子さんと動物たちがたたずんでいる絵です。今年、動物像をすべて仕上げたので、来年はお弟子さんたち、人間像の制作に入ります」

仕上がった飯塚さん版・釈迦涅槃図を「一番最初に見てほしかったのはやはり野村さん。モノ作りの道に誘ってくれた大恩人だと思っています」

▲野村さんの書いてくれた色紙を手にする

▲飯塚さんのお気に入り、布袋像