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敷島小「一本(ひともと)けやき」がモニュメントに 
25日から県展でお披露目

2022.11.09

敷島小「一本(ひともと)けやき」がモニュメントに 
25日から県展でお披露目

敷島小の校庭の真ん中にあった、樹齢100年以上のケヤキの大木。2016年に病気のため惜しまれつつ伐採されたが、彫刻家、山田一奘(かずまさ)さんの手で、同校150周年記念のモニュメントとして蘇った。11月25日からの群馬県美術展覧会でお披露目となる。山田さんに制作にまつわる話を聞いた。(取材/柁原妙子リポーター)

3世紀をまたいだ小学校の歴史を作品に

大人2人が両腕を広げたくらいの太さのケヤキの幹を、縦に3分割し、3つのCの文字を製作。それを県展の前に1つに組み上げて完成品となる。

「敷島小が生まれたのは1872年で19世紀。150年経ったいまは21世紀。3世紀をまたいだことになり、それを表現した作品です」と山田さんはいう。

ケヤキは1920年、同校が現在地に移転した際、旧校舎の東側に数本植えられたが、いつの頃からか1本になった。1973年、新校舎が建てられ旧校舎が撤去されると、その位置は校庭のど真ん中に。やがて高さ18㍍、周囲5㍍の大木に育ち、「一本けやき」という愛称で児童や地域の人々に親しまれた。晩年病気が見つかり手を尽くしたものの、倒木の恐れから伐採されることとなったが、幹は「いつかモニュメントに」と同校の倉庫へ。6年半の眠りの後、いよいよ出番がやって来たのだ。

 

▲大きく枝を広げていた「一本けやき」

▲完成を前に丁寧にやすりをかける

40年前は敷島小の教員

山田さんの本名は山田一郎、群馬県美術協会理事を務めている 。40年ほど前に敷島小で教員をしていたことが縁で、今回の依頼となった。作成中、校庭で遊ぶ児童やケヤキの木陰で涼む人の姿などがふと脳裏に浮かぶ瞬間もあったそうだ。

当初、山田さんはかなり大きな作品が作れると考えていたが、ケヤキを受け取って切り出すと予想より病巣が大きく、何度か方針変更を余儀なくされた。

彫りはじめてからは、何度も小ヒビが入ることから、乾燥が甘いことに気付いた。ケヤキが乾燥する速さは1年に1寸(3㌢)と言われている。伐採された年月から考えると、この大木を加工するにはまだ早かったようだ。

「素材としての制約は樹木を相手にする場合必ずある。完成後もヒビが入れば補修の可能性も考えられる、生き物が相手だからね」と、この作品と末永く付き合っていく覚悟を話す。

さまざまな人々の想いや不思議な縁から生まれた作品、県展でぜひ目にしてほしい。

▲「校庭にあるタイヤ飛びの形も連想して作品を仕上げた」という山田さん

▲空中写真では、校庭の真ん中で存在感を放っていたのがわかる

▲伐採されたあとは職員室の壁に「ありがとう」の展示が

第73回群馬県美術展

会場 群馬県立近代美術館(高崎市綿貫町992-1 群馬の森公園内)

会期 11月25日(金)〜12月4日(日)

時間 9時30〜17時

入場料 無料