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文武両道と探究活動を追求
前橋育英高・二渡校長に聞く

2024.06.10

文武両道と探究活動を追求
前橋育英高・二渡校長に聞く

甲子園と全国選手権、野球とサッカーの両方で高校日本一に輝いたのは全国で6校しかない。そのうちの1校が前橋育英高校。スポーツ強豪校として全国にその名を轟かせている高校のトップ2が今春、そろって変わった。校長は県立前橋高校で3月まで4年間校長を務めた二渡諭司氏、副校長には中央中等の校長だった中西信之氏が就任。進学校のトップを迎え入れ、進学面での強化を狙っているとの観測が広がっている。二渡校長にインタビューした。

多種多様な生徒に新鮮な驚き

――校長に就任して3カ月目に入ります。新しい学校の印象はどうでしょう。

「野球、サッカー以外にも強い運動部があり、スポーツ強豪校のイメージが強かったのが正直な感想。でも、中に入って見ると、勉強で成果を出したり、文科系の部活で活躍したりと、多種多様な生徒がいることに驚きました。公立校は学校ごとにほぼ同質な生徒が集まる傾向がありますから。

全校で定員が1500人超と規模も大きく、県内だけでなく、全国から育英高に来たいと集まってきます。また、意外と女子が多く、男女ともに頑張っているのには感心しました」

▲日本一になった野球部を讃える石像

▲サッカー部はインターハイでも頂点に立った

――どのような学校運営を目指しますか。

「創業者である中村有三元理事長は1人ひとりの個性を尊重し、能力を引き出し、高めさせる教育の場を設けたいという思いでこの学校を創設しました。まさにいま言われている『誰一人取り残されない』を実践する教育理念でしょう。

スポーツが得意な子は努力してもっと上手くなればいいし、勉強のできる子もそう。まだ、自分が何をしたいか、どんないいところがあるのか、気が付いていない生徒にはまず自分を大切にし、かけがえのない人間関係を構築してもらいたい。そして、自分の中で輝く原石を見つけてほしいと願っています」

▲育英高の創立の理念に感銘する二渡校長

熱心な教職員集団と協力

――公立への進学志向が強い群馬県で私立高校は生き残りをかけ、進学面に力を入れています。

「私や中西副校長が招えられたのにはそういう思惑がまったくないとは言えないと思います。進学にももちろん、力を入れていきます。

昨年度の実績ですが、国公立大に37人、私立大に346人が合格しています。過去には東京大に合格した生徒もいますし、私立の中にはいわゆる難関校といわれる大学にも受かっています。熱心な教職員集団ですので一緒になって取り組んでいきたいと思います。

スポーツについても、さらに発展させたい。勉強でも、スポーツでも頑張る学校にしたいですね」

▲進学面でも指導力が期待される

――課題を感じることはありませんか。

「最近の高校は学校の中だけでなく、学校の外、地域社会や企業との連携が求められています。本校でも探究活動で製薬会社やドラッグストアと連携して活動しています。これからは食品メーカーをはじめ複数の企業との連携も計画しています。ただ、現段階での活動は、企業とのコラボでは専門高校に及びませんし、何か課題を探し出して解決の道筋を見つけるような進学校の探究活動とは差があるかなと思います。

こうした活動をテコ入れするとともに、まだ構想段階ではありますが、国際交流にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

卒業生には『この学校を出てよかった』、在校生には『この学校に来てよかった』、そして、中学生には『この学校に行きたい』と思ってもらえるよう、教職員一同で力を合わせていきます」

前橋育英高校

1963(昭和38)年、前橋市朝日が丘町に開校する。特別進学、総合進学、スポーツ科学、保育の4コースあり、定員は1学年510人。野球部は2013年の全国高校野球選手権大会、サッカー部は2018年の全国高校サッカー選手権でそれぞれ優勝している。系列校、姉妹学園に育英大、育英短大、育英メディカル専門学校などがある。主な卒業生にサッカー元日本代表の山口素弘、松田直樹(故人)、プロ野球西武ライオンズの高橋光成、格闘家の天田ヒロミがいる。