news
NEWS
【速報】「世界のチョコアイカ」へ
パリで外国人最高賞の栄誉
2025.10.29
フランスのチョコレート愛好家団体「C.C.C.」が主催する世界的な品評会で、前橋市在住のチョコレートアーティスト、チョコアイカさん(35)のブランド「AikaKobayashi」は、外国人枠の最高賞「外国人アワード」を受賞した。評価欄には異例の「パーフェクト」と記された。10月29日の日本時間22時、パリのサロン・デュ・ショコラで行われる授賞式でスピーチを行い、巨匠たちの前に立つ。
(取材/阿部奈穂子)
前橋からパリへ、特別の特別
「ああ、報われた」。9月中旬、パリのC.C.C.本部から届いた通知を見た瞬間、涙があふれた。
前橋市の工房で一人チョコを作り続けてきた彼女のブランド「AikaKobayashi」が、外国人アワードに選ばれたのだ。昨年の金賞を超える“特別の特別”だった。
C.C.C.は「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の略称で、1981年創設の歴史あるフランスのチョコレート愛好家団体。外国人アワードはフランス国外のブランドの中から、味・デザイン・哲学すべてにおいて卓越した数ブランドを選び抜く特別枠。その年の“世界で最も注目すべきショコラティエ”として認められる栄誉だ。
これまでサダハル・アオキ、辻口博啓(モンサンクレール)、小山進(パティシエ エス コヤマ)、土屋公二(ミュゼ ドゥ ショコラ テオブロマ)といった日本を代表する巨匠たちが受賞してきた。
受賞理由はそれぞれに添えられ、「舌触り」「デザイン」など細やかに評価される。チョコアイカさんには「パーフェクト」と記されていた。C.C.C.の長い歴史の中でも、極めて異例の評価だ。
C.C.C発行のガイドブック「LE GUIDE2026」 には「形も見た目も素晴らしい手描きのチョコレートボンボン。どれもが芸術作品のよう。風味は独創的で、口の中での余韻も完璧。まさに至高」と絶賛されている。
▲LE GUIDE2026の冒頭の特集ページでブランド名、賞名が掲載されている
前橋の小さな工房から世界へ
2023年2月にこの道に入ってから、わずか2年8カ月での快挙だ。「昨年より上に行くには、同じことをしてはいけない」と心に決め、市街地の神社に毎日通った。雑念を払い、自分の内側を見つめ直した。
「チョコレートは心の鏡。自分のときめきや、ふるえを表したい」
やがて、「八百万(やおよろず)の神の宿ったチョコレート」というキーワードが浮かんだ。森羅万象のあらゆるものに命が宿るという日本人の自然観を表したいと考えた。その思いを整理するため、みなかみ町の山奥の温泉宿に一日こもり、ひたすら紙に書き続けたという。
▲思いつくままに紙にしたためる
新作「WONDER OF THE EARTH」誕生
生まれたのが、今回の受賞作「WONDER OF THE EARTH」。テーマは「地球の奇跡」。甘さ、苦味、酸味、塩味、そして時に旨味――地球が生む多様な味覚の驚きを4粒のチョコレートに閉じ込めた。
彼女が追求するのは「味」だけではない。チョコレートの温度や食感、ひと口で感じる余韻、手にした瞬間の造形美――そのすべてに心を注ぐ。
1粒目の「地球」は、黒糖・青のり・ライム・塩を使い、海と大地の香りを融合した。
▲地球
2粒目の「WOW!」は、グアバ・黄色パプリカ・キュウリを組み合わせ、夏の朝のような爽やかさを弾けさせる。制作中は松田聖子の「青いサンゴ礁」を口ずさみながら、気持ちを盛り立てたという。
▲WOW!
3粒目の「Destination」は、「抗えないもの」がテーマ。白井屋ホテル裏にある大きなイチジクの木の下で葉の匂いをかいだとき、言葉にならない“抗えない何か”を感じた。その葉を使い、イチジク、ココナッツ、そして古代から伝わる柑橘・タチバナの花を重ねた。
甘やかでどこか切ない香りが、記憶の奥を呼び覚ますようなチョコレートになった。
▲Destination
4粒目の「根」は、ゴボウとオロロソ・シェリー。見えない根への敬意を込めた。
それぞれに異なるデザインを施した。「地球」は海の上に大陸が浮かぶような壮大な構図に。「根」は生命の脈をモチーフにしている。「WOW!」と「Destination」は最後までデザインが決まらず、提出のためフランスへ出発する当日深夜、ようやく納得のいく形にたどり着いた。「最後の5日間はほとんど寝ていませんでした」と笑う。
▲根
受賞を通して強く感じたのは、「より多くの人にAikaKobayashiのチョコレートを届けたい」ということ。これまで一人で製造から販売まで担ってきたが、今後は体制を見直し、スタッフを迎え入れることを計画中だ。
「パリに店舗を持ちたい」。新たな夢も生まれた。
「この世界に生きている一秒一秒を、心のときめきをチョコにして広めたい。もっともっと、自分の感性や思いにフォーカスしていきたい」
その一言が、彼女の次のステージを予感させる。
受賞記念ショコラ、限定販売
この快挙を記念して、「受賞作品4粒セット」を10人限定で販売する。価格は10,000円(税込み)。
さらに定番の「世界一周ショコラ6粒セット」を50人限定で6,000円(税込み)で販売。
会員制のため購入には登録が必要だが、「前橋新聞mebuku」読者は通常5,000円の会員権が無料となる。
申し込みは公式LINE(https://lin.ee/yA1mXk2)に『mebuku特別販売』と入力するか、インスタグラム[@choco_aika_]のプロフィール欄からアクセスできる。
チョコアイカ
1990年、前橋市生まれ。元総社中―前橋女子高―学習院大学理学部物理学科卒。ローソン勤務を経て、2022年に退職。オリジナルブランド「アイカショコラ」を創業し、後に「AikaKobayashi」に改称。前橋市内の工房で製造から販売までを一人で手がける。2024年C.C.C.金賞、2025年外国人アワード受賞。


