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昭和のカーリングガールズ
智本さんの最新作、12月3日発行

2024.11.30

昭和のカーリングガールズ
智本さんの最新作、12月3日発行

 昭和15年に札幌で開かれる冬季五輪に前橋のカーリングガールズが出場を目指す―。そんな設定の小説『氷上の花光らしむ』が12月3日発行される。前橋市在住の歴史小説家、智本光隆さんの最新作。戦争の足音が近づく中、前橋にある女学校の生徒がカーリングのチームを結成、五輪出場の夢を追いかける。

幻の札幌五輪目指す青春群像

 主人公は前橋にある明治高等女学校に通う伊香保温泉の湯の花饅頭店の娘、桜乃。昭和12年、榛名湖で出会った都内の男子大学生のカーリングチームとの因縁からカーリングに夢中になり、仲間とともに数々の困難を乗り越えて冬季五輪代表選考大会への出場権を獲得する―というあらすじで、昭和初期の女学生の青春を詩情豊かに描いている。
 萩原朔太郎が波宜亭先生の名で登場、軍神・岩佐直治中佐をモデルにした人物も重要な役で絡む。
 昭和初期に前橋市中心街にあった麻屋百貨店やキリン食堂、前橋電機館といった名所や路面電車の伊香保軌道線が随所に出てくる。

▲『氷上の花光らしむ』の装丁

 明治高等女学校も前橋に昭和30年まで実在した私学で、著者である智本さんの曾祖母の姉、鈴木多満子さんが校長を務めた。発行日の12月3日は奇しくも鈴木さんの命日と重なる。
 カーリングが好きな智本さんは昭和初期の女学校の生活を描くことを以前から構想し、二つを絡めて歴史小説として書いた。昭和15年の札幌での冬季五輪は東京での夏季五輪とともに開催が決まっていたが、戦時色が濃くなり国際的に孤立した日本が開催権を返上し幻に終わった。
 智本さんは「生き方の限られた時代の女学生たちの青春は窮屈で諦観として、それでも凛として、愛おしく、そして輝く。そんな姿を少しでも活写できればと思いました。当時の文化、文学、民俗なども取り入れてみました」と話している。

▲著者の智本光隆さん

 『氷上の花光らしむ』は単行本(ソフトカバー)、337㌻。発行は郁朋社。1650円(消費税込み)。前橋市内の書店で取り扱う。

智本光隆(ちもと・みつたか)

 1977年、前橋市生まれ。南橘中-明和県央高-京都精華大―同大学院-群馬大大学院社会情報学研究科修士課程修了。2008年、南北朝動乱を描いた『風花』で歴史群像大賞優秀賞を受賞、2010年に『関ケ原群雄伝』でデビューする。近作に『猫絵の姫君-戊辰太平記-』、『銅の軍神-天皇誤誘導事件と新田義貞像盗難の点と線』がある。本名・千本木智明。