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フグは前橋に限る
環境技術研究所が養殖成功
2023.11.15
前橋産のトラフグはいかが―。環境技術研究所(嶋田大和社長)は内陸でのフグの養殖に成功、11月14日、白井屋ホテル「ザ・レストラン」に“初出荷”した。生産コストの低減を図り、確立した養殖システムを事業化したい前橋市内の企業、個人に提供。「前橋産のフグ」を新たな名産にしようとしている。
トラフグ、1.8㌔に育つ
前橋市六供町にある環境技術研究所開発センター。水槽の中でトラフグが泳いだり、海底の砂に模した活性炭の中に潜ったりしている。
フグの養殖は昨年2月から始め、30匹ほどを生育している。大きなものは体長50㌢、重さ1・8㌔の大物に成長、食用に最適になった。
開発センターは20年前から海水魚の養殖研究に着手した。嶋田社長の中央大理工学部の同級生だった梅津剛前橋工科大准教授に委託、第一弾として前橋市の水道水でヒラメを養殖するシステムを開発した。
前橋の水で作った人工海水を活性炭に加え、複数のバクテリアやオゾンの力で浄化させることで海水を補充することなく循環して使用する独自システムを確立。養殖で一般的な薬品を一切投与していない。
ヒラメは3年前から安定供給する体制が整った。ザ・レストランに加え、まえばしガレリア内のセパージュでフランス料理に調理されるほか、活魚のまま出荷できるため、料亭やホテルで生け造りされる。
フグの養殖はヒラメをベースに水温、餌の種類、量やタイミングなどをデータ化、最適な飼育方法を追求してきた。梅津准教授は「鋭い歯で噛み合って傷つけないよう、歯を数回、切り抜く必要があり、これが一番の労力」と分析、省力化を目指している。
研究所内で試食した結果、「天然や養殖で市場に出回っているものと遜色ない肉質になった」(嶋田社長)ことから、取引のあるザ・レストランに試験的に提供することになった。
フランス料理に利用
14日はフグ調理の免許のある割烹「入舟」の調理師、濱田善行さんがフグを捌き、ザ・レストランに納入した。フグ調理歴44年のベテランも「弾力があり、いいフグだ」とお墨付きを与える。
ザ・レストランの片山ひろシェフは「『上州キュイジーヌ』を掲げ、食材はすべて群馬県産を使っている。ヒラメに続いてフグも料理できれば、前橋に名物になる。皮も身も骨も余すことなく使います。何か郷土のエッセンスも採り入れたい。さて、どんな料理にしようか」と新たな一品を楽しみにしている。
海水魚の内陸養殖について、嶋田社長は「水質汚染や海水温の上昇、台風などの自然災害により、天然物の水揚げが減ったり、海上養殖が大きな影響を受ける危険性がある。安心・安全な海水魚を提供するためには必要になる」と指摘する。
現状では市場価格より高くなってしまうことから、コスト低減のため歯切りの行程をはじめ養殖方法を見直ししていく。事業化にめどがたてば、養殖システム全体を販売する。