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【前橋発ぶらり旅▶1】
初秋の真鶴 地魚三昧

2026.09.29

【前橋発ぶらり旅▶1】
初秋の真鶴 地魚三昧

 夏が終わった。海を見たくなった。鉄路で簡単に行ける場所がいい。上野東京ラインの終点は熱海。でも、哀愁の男ににぎやかな観光地は辛い。2つ手前に真鶴がある。行ったことがない。魚が旨いらしい。人生初の一人旅、ここにしよう。

グリーン車でだるま弁当

 前橋駅11時5分発の両毛線で高崎駅へ。構内のコンビニで昼食を仕入れる。せっかくなので、だるま弁当に。1500円。あれ、こんなに高かったっけ。まあ、せっかくの旅だからいいか。

 ビールのロング缶を1本と角ハイボール濃いめのショート缶を念のため2本購入。4番線へ向かい、到着した電車のグリーン車2階席に乗り込む。

 11時32分、時刻通り発車。3時間28分、42駅を通る長旅が始まる。ビールを空けて1人祝杯。

▲昔より豪華になった気がする

 久しぶりのだるま弁当、旨いな。鶏肉、シイタケ、タケノコ、花豆と具材が豊富。おかずがいいつまみになるし、醤油味の茶飯が〆になる。

 1人宴会を楽しんだら、1人2次会へ。池井戸潤の『俺たちの箱根駅伝』を読みながら、ハイボールを飲る。鉄路は箱根駅伝のコースと並行、中継所のある戸塚、小田原を通過する。往路(行き)で上巻、復路(帰り)で下巻を読む計画。スマホのスイッチはオフ。アナログな一泊二日とする。

最終便のバスに乗り遅れ

 2本目のハイボールが空になるころ茅ヶ崎を通過。しばらくして、15時ちょうど、真鶴に着いた。

 駅周辺を散策するが何もなさそう。宿に向かうとしよう。バスが1台、駅を発った。

 真鶴半島を巡るバスがあり、宿はバス停の前。駅のバス停で時刻表を見て、えっ!。15時5分、さっきのバスが本日の最終便だった。

▲まさか15時台で終わりとは、バスは出ていく

 宿までは2㌔強。30分くらいで行けそうだ。急ぐこともないし、タクシーでなく歩こう。

 海岸通りを歩く。潮風が心地よい。風格のある干物店に立ち寄る。明治10年創業の「魚伝」。真鶴港に揚がった地魚を職人が手作業で干物にするという。小アジ、ムツ、ウルメイワシ、カマスを土産に送った。

▲港で釣りをする人たち。何が釣れるのか

▲干物店が運営する弁当屋さん。美味しそうでした

 30分ほどして、お目当ての民宿「しょうとく丸」の看板が見えてきた。海が目の前に広がる。波打ち際をしばし散策して宿に入った。

▲お世話になる宿。ご夫婦が結婚してから始めたとか

刺身、煮物、焼物に地酒

 しょうとく丸は創業60年、夫婦2人で営む全4室の小さな民宿。「真鶴の地魚を堪能するならここ」と地元・神奈川新聞社の記者に教えてもらった。

 家族風呂でゆっくり汗を流し、すでに敷いてあった布団でまどろんでいると夕食の時間に。

▲一人旅にはこれで十分。海側の部屋

 4人掛けのテーブルいっぱいにいくつも料理が並べられていた。席に座ると、刺身の盛り合わせも登場。美味しそう。ビールを注文、宴が始まる。

▲これに焼物が付く

 八寸はサザエのつぼ焼きなど3点。小鉢はモズクの酢の物。アジフライ、カマスの焼物もある。

 刺身はタチウオ、アジ、サザエ、イサキ、イナダにカンパチの若魚のショゴとか。これは初めて。カンパチよりあっさりして上品な味。どれも微妙に味が違い、利き酒ならぬ利き魚をしているよう。

▲すべて真鶴の海で獲れた魚

 こうなると、日本酒がほしくなる。神奈川県の地酒、「丹沢山」の純米吟醸をグラスで。すっきり辛口。地魚に地酒。合わないわけがない。

▲丹沢山をグラスで。つい飲み過ぎてしまう

 ひと際存在感があるのはキンメダイの煮付け。カシラの部分がどんと。ゼラチン質が多く、骨の周りは旨味が濃厚。身より断然旨い。丹沢山、お替り。

 「刺身は飽きたら、しゃぶしゃぶにしてもいいわよ」。女将さんが教えてくれた通りに。これもいい。

▲キンメの煮付け。いい味でした

▲地魚のしゃぶしゃぶ

 客は男性のお一人様が自分を含めて3人。それに親子と思われる中高年の女性2人。大阪から来た鍼灸師の男性と話が弾み、つい長居をしてしまった。

 〆はご飯を残し、味噌汁をいただく。アラがたっぷり。旨みがすごい。ごちそうさま。

 部屋に戻り、布団の横になって相模湾に揺れる漁火を眺めていたら、いつの間にか寝落ちしてしまった。

夢にみたパタンに感激

 朝6時、気持ちよく目が覚めた。海辺を散歩して朝食会場に。朝からすごい。アジの干物に煮物。刺身まである。大阪の男性はビールを飲んでいる。「どうですか、一杯」。ここはぐっと我慢しよう。

▲朝から飲みたくなる

 9時過ぎにチェックアウト。再び歩いて真鶴駅を目指す。お腹を空かせなくては。

 横浜経由で桜木町へ。ここから歩いて10分ほどで飲み屋が連なる野毛に。お目当ての店に着いた。第一亭。テレビ番組「孤独のグルメ」で数年前に観て以来、ずっと来たかった台湾料理の店だ。

▲野毛の町中華の殿堂店

 メニューは見ない。「チートのしょうが炒めと青菜炒め。それとビールください」。注文は決めていた。

 チートはガツ(豚の胃)。コリコリした食感がたまらない。生姜が効いた塩味でとろみがついている。

 青菜はチンゲン菜。ニンニクたっぷりで、こちらもとろみあり。ビールによく合う。1本追加。

▲チートと青菜。ビールが進む、進む

 あらかた食べたら、「パタンを」。裏メニューの冷製の和え麺。包丁で「パタン」と叩いて潰した大量のニンニクとネギが平打ち麺に乗っている。醤油ベースのタレとゴマ油が器の下にあり、「よく混ぜてね」と店員さんが教えてくれた。

 旨い。何で? 素朴な旨さに感激しきり。来てよかった。また、来よう。

▲また食べたいパタン

 桜木町から横浜へ。14時12分発の上野東京ラインに乗り込む。もちろんグリーン車。帰りは控えめに角ハイボール濃いめショート缶を1本。

 『俺たちの箱根駅伝』はまだ上巻を読み終えていなかった。角ハイボールを飲みながら読み出すが、いつの間にか夢の中へ。起きたのは終点・高崎だった。

 両毛線に乗り換え前橋駅へ。初めての一人旅は終わった。