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木工職人、富田学さんが初の個展 
10日から「広瀬川アートⅡ」

2022.09.09

木工職人、富田学さんが初の個展 
10日から「広瀬川アートⅡ」

赤城山麓の中之沢地区に工房を構える木工家具職人、富田学さんの作品5点を展示した「広瀬川アートⅡ」が9月10日から22日まで開かれる。展示作業を終えたばかりの富田さんに作品を解説してもらった。(取材/阿部奈穂子)

自然と人工のバランスを意識

「僕の初の個展になります。約2カ月かけて、無垢材を使い川や自然を表現しました」と富田さんは話す。メーンとなるのは、朔太郎橋の上に展示された2つの作品。ケヤキの皮を張り合わせ川の流れを表現した「静動」と、ひじ掛けの一部に流木を使った椅子「WAC‘22」だ。

「自然が作り出す形と人工的に作り上げた形の最適なバランスを意識して製作しました」という。

▲朔太郎橋に飾られた「静動」(左)と「WAC‘22」

椅子といえば、富田さんのライフワークだ。2019年には製作した椅子がスニーカーメーカー「NEW BALANCE」のブランドビジュアルに使用された。

今回の展示作品「輪廻」も椅子がテーマ。脚が朽ちた椅子がさかさまになって水路に落ちているオブジェだ。「広瀬川が舞台なので、水を使ってみたかった。役割を終えた家具が自然に返り、また生まれ変わるというメッセージを込めました」

▲水車の近くに飾られている「輪廻」

製糸工場を偲んで

かつて製糸工場があったという絹の橋の近くには、当時に想いを馳せた作品「維渡(いと)」を展示した。使用したのは、椅子の背もたれ用に細く切った8㍍ほどのナラの木。蒸して曲げて、糸が絡まったようなオブジェを作り上げた。眺める角度によって、8の字のように見えたり、は虫類のように見えたり。想像力をかきたててくれる。

▲硬いナラの木がこれほどグンニャリと曲がるとは。「維渡(いと)」

諏訪橋の上には「時の標本」という作品が飾られている。真ん中を繰り抜いた額縁のなかに、年輪が刻まれた4つの木片が並んでいる。よく見ると割れたり、ヒビが入ったり。数百年もの間生き続けてきた木片とイキイキとなびく広瀬川の緑の柳。その対比がいい味を出している。

▲背景のケヤキとの相性が抜群。「時の標本」

5つの作品の展示期間は12日間。「雨や風、直射日光にさらされ続け、反ったり、色味が変わったり、変化していく作品を観察するのも楽しみです」と富田さん。

「広瀬川アートⅡ」は前橋まちづくり公社が主催。広瀬川周辺にいつもの景色が少しだけ違って見えるアート作品を展示し、広瀬川湖畔緑地の魅力や認知度向上を目的とした社会実験を行うのが狙い。SNSを利用した人数、発信内容も調査する。期間中は広瀬川アート公式Instagram(@hirosegawa_art)にて情報を更新する。

▲想像力を膨らませて作品づくりに取り組んだ富田さん