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すかや本店 1月末で店仕舞い
スズラン高崎店地下の人気蕎麦店

2023.11.22

すかや本店 1月末で店仕舞い
スズラン高崎店地下の人気蕎麦店

スズラン高崎店地下1階にある蕎麦店「すかや本店」が2024年1月末で閉店する。2世紀近くの歴史を誇り、最盛期には高崎市や前橋市などに28店あった「町蕎麦」の総本山。スズランの建て替えに伴って十分な入居スペースが確保できなくなり、苦渋の決断をした。立ち食いのカウンターで美味しい蕎麦を安く、早く、お腹一杯食べられるとあって毎日のように通う熱烈なファンもおり、店には惜しむ声が寄せられている。

旨い、安い、早い、多いの4拍子

スズランの正面入口左の階段を下ると、平日の昼時、名物の行列が見られる。回転が速く、次々と入店。カウンター越しに好みの蕎麦を注文する。

二つある大きな釜はフル稼働。大きなザルで茹でた蕎麦をすくい、大量の冷水で一気に締める。もりやざるはセイロに盛り付けて提供。客は蕎麦猪口に汁を入れ、箸を割ってスタンバイしている。

▲茹で置きはせず、いつも茹でたてを食べられます

蕎麦は北海道産などをブレンドした蕎麦粉を毎朝6時から機械で製麺する。ストレートの中細麺は長さが40㌢。それでも喉越しがよく、するする啜れる。

量も半端ない。並でも通常の店の2~3倍はある。「常連さんに盛りをよくしたのが始まり。お客さんが喜ぶのでだんだん増えていった」と釜場に立つ専務の須賀良二さん。並の3倍の特盛りをペロリと平らげる蕎麦喰いもいるから驚きだ。並の胃袋の人は「麺少なめで」と頼めば海苔をサービスしてくれる。

▲大ざるとかき揚げ天

▲メニューはシンプルだが、裏メニューが存在する。夏限定の冷やしたぬきはもう味わえない

値段も庶民的だ。もり、かけが480円。かき揚げは100円。「ワンコインで食べられるのが蕎麦。信念にしている」と何年も値上げしていない。

メニューにない品も数多く存在する。「あったかいの半分」はたぬき蕎麦の揚げ玉を半分にする代わりに海苔が加わり、花巻とたぬきを合体させた種物。「月見しかないのに『卵とじにして』とか。お客さんの要望をできるだけ聞いてきた。お客さんあっての店だから」と奥さんの恵理子さん。

卓上のネギは取り放題。足の悪い人やお年寄りにはテーブル席も用意している。

▲「あったかいの半分」。冷たいのもできます

▲いつも頼む「たぬき汁」。海苔をサービスしてくれた

最盛期28店が9店に減少

すかやの創業は1830(天保元)年。高崎市中心街に店を構え、多くの弟子が働いた。10年修業すると暖簾分けでき、多くの支店が誕生。支店で修業した人がさらに分店を開き、「すかやのれん会」は一大勢力となった。

本店はスズラン高崎店が開業した1968(昭和43)年に移転し入居した。スズラン前橋店にも1983(昭和58)年まで直営店を出した。

後継者不足から閉店を余儀なくされる店が相次ぎ、現在も営業しているのは本店を含め9店のみとなった。

▲懐かしそうに「すかやのれん会」の名簿に目をやる須賀社長

本店は2024年春に完成するスズラン高崎店への入居を打診されたが、飲食できる十分な広さが確保できなかった。須賀専務が古希を迎えるなど、働き手はみな年を重ね、後継者もいないことから暖簾を下ろすことになった。

亡き夫の跡を継いで20年にわたり社長を務めている8代目の須賀玲子さんは「お客さんが寂しがってくれる。私たちも辛く、悲しい。だけど、よくここまで続けられたと思う。盆も暮れも休みなしで働いた。みんなお客さんのお陰と感謝しています。すかやの灯は残っている支店に引き継いでもらいたい」と話している。

▲すかや本店を支えた須賀社長、良二専務、恵理子さん(左から)