interview
聞きたい
【聞きたい田中敦子さん3▶︎】
故郷、前橋への恩返し
まずは介護施設での読み聞かせから
2022.06.02
今年で声優生活31年目を迎える、前橋出身の田中敦子さん。代表作は27年間演じ続けてきたアニメ「攻殻機動隊」の主人公、草薙素子。女性型サイボーグで、公安9課の現場指揮官だ。ニコール・キッドマンやジュリア・ロバーツなど外国映画のヒロインの吹き替えも多い。田中さんにこれからの抱負を聞いた。(取材/阿部奈穂子)
ニコール・キッドマンと好相性
―洋画の吹き替えでは、ニコール・キッドマン、ケイト・ベッキンセール、グウィネス・パルトロー、ジェニファー・ロペスとそうそうたる女優さんを担当しています。特に思い入れの強い女優さんといえば。
やはり相性の良し悪しというのがあるのですが、ニコール・キッドマンとはとても相性の良さを感じています。演じやすいというか。
日本中で彼女のお芝居を一番理解しているのは自分だと自負しています(笑)。
―今取り組まれている作品、またはこれからオンエアされる作品は?
一つはU-NEXTで配信中の作品「ロストシンボル」。「ダ・ヴィンチ・コード」のロバート・ラングドン教授シリーズの最新作です。CIAの捜査官で、日系のサトウという役を演じています。
あとは5月、NETFLIXで配信スタートとなった「攻殻機動隊SAC_2045」最新シーズンでしょうか。
―若い方に人気のテレビアニメ「呪術廻戦」にも出演されていますね。
花御(はなみ)というキャラクターの声を担当しました。
アニメ化にあたっては男性が声をあててもよさそうなキャラクターだったのですが、それを女性の私にキャスティングしてくれて、とても光栄に思いましたし、逆に楽しませていただきながら演じました。
―故郷である前橋でも活動をなさりたいとか。
今、母は毎日デイサービスに通っています。父も亡くなる前はケアマネさんやヘルパーさんにお世話になり、本当に地域の方に支えていただいてきたので、恩返しをしたいと思っています。
まずは、母が通っているデイサービスで読み聞かせみたいなことができれば。今、コロナ禍なのでどこまで外部の人間が入れるかというところが問題なのですが。だれでも知っている昔話を朗読したら、昔のことをふっと思い出して、皆さんが懐かしく感じてくださるのでは、なんて考えています。
私はサブカルの人間なので、微力ではありますが、地元のラジオ局やテレビ局でナレーションのお仕事や短い番組をやらせてもらえたら幸せだなあと思っています。
熱量が高いときにチャレンジを
―最後に、声優を目指す中高校生へアドバイスをお願いします。
私が学生の頃は月に1度、有楽町あたりまで、電車でお芝居を見に行っていました。2時間以上かけて。いまは新幹線ができたので、前橋は都内への通勤圏、通学圏になりました。
声優になるために、東京で暮らさなければという感覚をもたなくてもいい。専門学校に通いたいけれど、アパートを借りる資金がないとか考えなくてもいい。新幹線通勤したり、リモートで授業を受ける方法もあります。
映画製作や声優学校への通学も、声優の仕事も、毎日、通勤しなくちゃいけないわけではありません。エンターテイメントに関わる仕事も地元にいながら、できるような場所だと思います。前橋は。
―やりたいと思ったら、とにかく一歩踏み出した方がいいということですね。
私はOL経験を経てからこの世界に入ったので、いくつになってから始めても遅いということはないと思っています。その熱量が一番熱いときが、始めるのにふさわしい時期なのだと感じます。
私は20代の中盤から後半でした。中学、高校でもやりたいと思っている方はそこから始めればいい。人生での経験値が高ければ高いほど得るものは大きく、表現の幅は広がると思います。
たなか・あつこ
1962年11月、前橋市生まれ。南橘中―前橋女子高―フェリス女学院大卒。声優。東京アナウンスアカデミー声優養成コース修了。マウスプロモーション所属。2020年、第14回声優アワード外国映画・ドラマ賞受賞。文芸あねもねR( http://www.joqr.co.jp/anemone-r/)
の活動にも力を入れる。
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