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【聞きたい田中敦子さん2▶︎】
「攻殻機動隊」のヒロイン、草薙素子
27年間演じ続けて

2022.06.01

【聞きたい田中敦子さん2▶︎】
「攻殻機動隊」のヒロイン、草薙素子
 27年間演じ続けて

前橋出身で、日本を代表する声優、田中敦子さん。今日に至るまでの苦労談、そして代表作となったアニメ「攻殻機動隊」の主人公、草薙素子の吹き替えについて話を聞いた。(取材/阿部奈穂子)

ルパン三世のヒロイン役で両親公認に

―養成所時代から、いろいろな作品に出演されていました。

東京アナウンスアカデミーという学校で声優の勉強をしたのですが、そのとき、教えてくださった先生の一人に、「東北新社」という大きな製作会社の演出家、小林守夫さんがいらっしゃいました。

小林先生にとてもかわいがっていただきまして、養成所にいるときから、分不相応な役を付けてくださったんです。映画のヒロインとか。

「主役を目指す人は、最初から主役をやって、そういう経験を重ねていかなくてはいけない」とおっしゃって…。そんな先生に巡り合えたことは本当に幸運でした。

―田中さんは最初から主役を目指していたのですか?

私は映画が好きで、映画の吹き替えをやりたいと思ってこの世界に入ったので。最終的にはヒロインの吹き替えを目標にしていました。

OLを辞めて声優になると宣言したとき、ご家族の反応は?

猛反対でした。父としては、大学出て、企業に進んで、あとは結婚してくれればいいだけの状態になっているにもかかわらず、「会社を辞めて声優になるなんてありえない」と。昔の父親ですからね。

でも私は頑固なところもあるので。当時、OLとはいえ、お給料があまり良くなかったので、妹と一緒に住んでいたアパートの家賃は父が払ってくれていました。「反対するなら、家賃も自分の分は自分で出すから」って、アルバイトしながら養成所で勉強しました。

―覚悟が違ったのですね。

そこから先はないという気持ちでした。転職っていっても、OLが嫌で転職するのに、またOLっていうわけにはいかないですし、すぐに結婚ということも考えられなかったですし。崖っぷちで最後のチャレンジをさせてほしいという気持ちでした。

―この作品に出演したことで、ご両親が声優の仕事を認めてくれたというターニングポイントはありましたか?

当時、ビデオは借りてこないと見られない時代。視聴者目線ではテレビのオンエアが一番メジャーな作品になってくるわけです。

ルパン三世という作品のスペシャル版が年に1回、金曜ロードショーで放送されていたのですが。1993年、30歳のとき、「ルパン三世ルパン暗殺指令」という作品のヒロインに抜擢していただきました。これはテレビでのオンエアですから、両親も見てくれたようです。

屈強でマッチョな初めての存在

31年の声優人生の中で、思い出に残っている作品は?

やはり、アニメ「攻殻機動隊」です。1995年、劇場アニメ「攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL」でヒロインの草薙素子に抜擢していただいて以来、27年間演じ続けています。5月からNETFLIXで「攻殻機動隊SAC_2045」第2シーズンの配信が始まりました。

―草薙素子は個性的なキャラクターですね。

子供の頃に出会った当時のヒロインといえば可愛くてキュートで、みんなの憧れの存在。草薙素子みたいに屈強でマッチョで、男性を束ねて事件を解決していくようなヒロインはいませんでしたし、設定からして近未来で、世界観も未知。ワケのわからない用語をべらべらしゃべりまくるような役も初めてでした。最初はついていくのに精いっぱい。

でも、声優として経験を重ねることで、内面的にいろんな経験値が上がり、表現者としての幅が広がった部分はあると思います。最近は、「素子とも、もう長くなったね」って対話ができるようになりました。

たなか・あつこ

196211月、前橋市生まれ。南橘中―前橋女子高―フェリス女学院大卒。声優。東京アナウンスアカデミー声優養成コース修了。マウスプロモーション所属。2020年、第14回声優アワード外国映画・ドラマ賞受賞。文芸あねもねRhttp://www.joqr.co.jp/anemone-r/

の活動にも力を入れる。

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